短編
□自分の罠に自分で嵌るってコメディーの定番だよね
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(何で。なんで、こんなことになってんだァァァァァ!!)
土方は、煙草を咥えながら自室で頭を抱えていた。
彼が、悩んでいる理由。それを知るには、昨日まで遡らなければいけない。
― 昨日の見回りの最中。土方は、銀時にあった。
「あれぇ。多串君じゃないの。」
少し気味の悪い笑みを浮かべながら、土方に近づく銀時。
「多串君じゃねぇって、いつも言ってんだろぉが。」
人相の悪い顔を更に悪くして、土方は答える。
土方は、どうもこの男が気に食わなかった。
掴み所がなく、人よりも少し変わった雰囲気を醸し出す、この男が。
そんな事を、知ってか何なのか、銀時はこうやって時々土方に突っかかってくる。
「まぁまぁ。何、今日は一人なの?」
「そうだ。」
これも、土方が銀時をあまり好かない理由。
銀時は、自分に用があって話しかけてくるんではない。沖田に用があって話しかけてくるのだ。自分の恋人である沖田に。
土方は、思っていた。自分も、銀時が気に食わないが、銀時もまた、自分が気に食わないと。
「丁度良いや。話があるんだよ。」
「はぁ!?」
と、思わず大きな声を上げる土方。
「うるさいよ。土方君。」
「あっ。悪ぃ。」
そう、指摘され素直に謝るが、すぐに我を取り戻す。
「てか、俺、見回り中なんだけど。」
「時間取らないからさ。な?」
「駄目だ。」
「ホント、ちょっとだけ。」
「だから、だ―ッ!」
そう言いかけた土方を無理矢理引っ張り、銀時は自分の家へと連れ込んだ。
「おい!万事屋!!」
そう怒鳴る土方の方を銀時は振り返った。
その顔は、いつもよりも真剣さを帯びていた。
「土方君さ」
「んだよ。」
その銀時の顔に土方は違和感を感じ、身を強張らせる。
「沖田君とは、どうなの。」
「別に、どうも、こうもねぇよ。」
何故、こんな事を聞くのか。土方は、不思議でならなかった。
因みに、銀時は二人の関係を知っている。
(何を考えてやがる。)
土方は、更に構えた。
「そっか。」
「何だよ。はっきりしろ。」
銀時は、少しばつが悪そうに頭を掻くと、口を開いた。
「俺さ、どうやら土方君のことが好きみたいなんだよね。」
少し間が空いた後に、土方の間抜けな声が響いた。
「はぁー!?」
銀時は、苦笑いだ。
「俺だって、信じられねぇよ。だって、嫌いだと思ってた奴をなんだぜ?」
何も、言えない土方。まだ、頭の整理がついていない。
「土方君?」
銀時にそう呼ばれて、土方ははっと目を見開く。
「あ、ああ。」
まだ戸惑っている土方。
「まぁ、土方君には沖田君がいるからね。
別に、どうこうしようとか思ってるわけじゃないから。」
また、口を閉ざす土方。
「そんだけだから、見回りの途中だろ。帰れよ。」
「ああ。」
土方は、ふらふらと家を出る。
そして、一日経って冒頭の通りだ。