短編

□近いやつほど警戒が必要
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「沖田くぅーん。」

銀時がそう呼びかけても返事はない。
それもそのはず、今銀時に呼ばれた沖田は、ここ万事屋に来てからずっと寝ているのだから。ソファに横たわりいつものアイマスクを着け規則正しく寝息をたてている。
銀時はそんな沖田の姿を見て大きな溜め息をついた。

「ったく。そんな格好しやがって。誘ってんですか、コノヤロー。」

銀時は、沖田の前に立つと上からその姿を眺めた。

(ホント、なんつぅー恰好してんだよ。)

銀時の言う通り沖田の恰好は少し刺激があった。いつも着ている黒の上着は着ておらず、スカーフも着けていなかった。黒のベストの下に着ているYシャツのボタンは二、三個開けてあり、沖田の色白で綺麗な肌がしかっりと見えていた。

そして、所々にある誰かが付けた赤い痕も―

それが、さらに沖田を色っぽく魅せていた。

銀時は、その場に座るとじっと沖田の事を見ていた。

(沖田君の寝顔、見たことねぇな)

そう思うと同時に、銀時はどんな寝顔をしているんだろう。という好奇心に駆られた。

その好奇心に逆わずに、沖田の着けているアイマスクに手を伸ばす。

が。

その手は、沖田によって見事に遮られた。

「旦那、何してんですかぃ。」

沖田はアイマスクを上に上げると、ギロリと銀時を睨んだ。
銀時は、ビクッと肩を上に上げ、動きを止めた。まるで、蛇に睨まれた蛙のようだ。

「い、いやぁー。ちょっとばかり、沖田君の寝顔を見ようかと−−」

「それは、ご法度ってぇもんですぜぃ、旦那。」

今度は、意地に悪そうな笑みを浮かべると、沖田は再び天井を眺めた。
所々に染みや、誰かが壊した所を補強した跡がある。

「沖田君さ…」

銀時が再び沖田に話しかける。

「何ですかぃ?」

「よく、無防備とか言われない?」

沖田はしばらく何かを考えてから天井から目を離さず答えた。

「言われますねぃ。土方とか、土方とか、土方とか。」

「それって、土方君しか言ってないじゃん。」

「だって、あいつしか言わねぇもん。」

「何それ。妬けるなぁー。」

おどけたように銀時は言う。

「旦那。」

そんな銀時の言葉なんかお構いなしの様に沖田はすんなりと話題を変えた。

「ん?」

「何で、俺はあんたに組み敷かれているんですかぃ。」

そう。いつの間にか沖田は銀時に組み敷かれていた。

「えっ…。誘ってんじゃないの?」

「誘ってやせん。それより旦那、あんたが何時俺を組み敷いたかこれを読んでる人には、わかりませんぜぃ。」

「それは、あれだよ、あれ。俺が、沖田君さ…。って言った時だよ。」

「俺に言ったて、俺は、知ってやすよ。」

「いや、俺はちゃんと読者に言ったからね。今の状況が状況だから。てか、沖田君は逃げないの?このままじゃ、銀さん本気で襲っちゃうよ?」

「旦那は、そんなことしやせん。」

銀時は沖田の顔をじっと見つめる。沖田もまた銀時のことをじっと見つめていた。
長い沈黙が二人の間に流れる。
しかし、それに耐え切れなくなったのか銀時が口を開いた。

「あーあ。俺の負けだ。」

銀時は沖田から身体を離すとソファに座った。沖田もその隣に座る。

「負けも何も、旦那には元々その気は無かったでしょーに。」

「さぁね。まぁ、俺が沖田君を襲ったら、きっとあのマヨラーに殺されるだけだけど。」

「確かに。」

沖田は、ククッと喉を鳴らして笑った。







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