Short

□雨の日こよし
1ページ/1ページ


「おつかれしたー」
「ん」

「おつかれさまですした」
「おぅ、おつかれ名無し川」


”宮地さんの俺に対する扱いが雑だ。”それが今日の彼の言い分。
というか、ここ最近はほとんどそれだ。
別に好かれたい訳ではないけど、なんかアレ、らしい。
梅雨の雨にしとしとうたれつつ、彼はそう言った。

そんなに差があるのだろうか。私はまずそこから理解していない。


「名無し丸はさ、いねーの?そういう人」
「そういう人って?」
「なんとなくさ、距離を縮めたいなー、みたいな」

うーん。戸惑っていると、いなかったら別にいいよ、と加えられた。

いない訳ではなかった。仲良くなりたい人なら、たくさんいた。
今帰路をともにしている、この高尾くんもその一人だった。

バスケ部ではレギュラーとして活躍、クラスでも盛り上げ役だし、勉強も(得意教科であれば)教えてくれる。
比べて私には何もない。彼との繋がりと言ったら、同じバスケ部だということぐらいだ。しかも、同じコートには立てないーー即ち、マネージャーの一人にしかすぎないのだ。


…まぁこんなタイミングだし、言ってみるのも いいのかなぁ。


「私はね…高尾くん、かな」

えへへ、と照れ隠しに笑うと、高尾くんは何かボソッと呟いてそっぽを向いてしまった。

…と思うと徐(おもむろ)に傘を差して、私をグッと引き寄せる。



「ありがとな」

「い、いやそんな」

再び照れ笑いをすると、高尾くんも笑った。



そんな、仲良しこよし



一つ傘の中。






新しい気持ちに気づく頃には。


(きっともう雨は上がってる)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ