闇に溶ける色

□伍
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「黒葉ッ!どこにいるんだい!?」


月明かりに照らされる静かな道で自分の声だけが響く。


どこにも黒葉の気配は感じられない。


いったいどこに?・・・いや、どこかなんて分かっている。


この事件の犯人の元だ。だがその犯人の場所がいまはまだわからない。


葬儀屋は小さく舌打ちをすると自身の店の屋根へ飛び上がりファントムハイヴ邸へ急いだ。



――ファントムハイヴ邸。


葬儀屋が屋敷へ着くと同時に屋敷の扉が開かれた。



「おやずいぶんとお早いですね。お待ちしておりました。」

「執事くん。君ももう気がついるんだね?」

「はい、もちろん。」

「じゃぁ早く彼女を・・・」

「まて。アンダーテイカー。」



セバスチャンの後ろから寝間着姿のシエルが顔を出した。



「伯爵。」

「アンダーテイカー、少しは落ち着け。」



葬儀屋はシエルに言われて初めて自分の中の焦るとゆう気持ちに気がついた。


すっくりと息を吐き自分を静める。



「すまないねェ、伯爵。」

「大丈夫だ。とりあえず中へ入れ。セバスチャン広間へ紅茶を。」

「かしこまりました。では葬儀屋さんもこちらへ。」

「あぁ。」



葬儀屋は広間へ通されシエルと向かい合わせにソファーへ腰をかける。


そして直ぐにセバスチャンが紅茶の乗ったワゴンを押して部屋へ入ってきた。


セバスチャンの淹れた紅茶を一口飲み喉を潤す。


「で、おまえはやつの居場所はわからないのか?」

シエルも紅茶を飲むと葬儀屋を見つめて口を開いた。



「そうだねェ。少なくとも今は街には居ないって事くらいしか。」

「そうか。」

「でも向かった方角なら少しはわかったよ。」



葬儀屋は気配が消える直前にその気配が動いた方角を覚えていた。


自分の仕事場である墓場の方向だった。


もしかすると墓場のさらに向こうの森の中に奴はいるのかもしれない。


街には居ないし墓場の手前は協会だ。


大体犯人が何者かとゆうのも分かっている、だからこそ墓場よりも手前に居るとゆうことはほぼ無いだろう。



「なるほど。では明日から本格的にそちらの森の中を調べてみましょう。」

「そうだな。今日は流石に僕が無理だ。」



シエルは眠たそうに欠伸をすると立ち上がった。


「今日は泊まっていけ。」とシエルは葬儀屋へ言うとセバスチャンと共に部屋を出ていった。






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