リトル・ウィッチ マーシュ

□トトリノノンのケーキ?
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「店長っていうか、うちは姉妹で協力してお店やってるのよ。私はレネット・キルシュ。よろしく」
レネットはココットの姉らしい。
「私はお店はやってませんけど…フローレ・ミルフィアです。よろしくお願いします」
「…よろしく。クーデリアよ」
「あ…り、リオネラ…です」
「実は、わたしもお店やってるの!職人通りのアトリエなんだけど…」
パルフェって娘の説明によると、なんだか錬金術のアトリエに似たお店って感じ。
「アトリエ?」
「錬金術のアトリエだよ。薬品とかいろいろな道具とか作ってるし、もしかしてパルフェちゃんたちも錬金術士なの?」
「パルフェはそんな大層なもんじゃないわよ。私はフロルエルモス一の天才魔道士のタマゴだけど」
また聞き慣れない言葉…風呂なんとかって何かしら?
「なんて呼んだらいいかな? ココットちゃんはココちゃんとして…」
「ここちゃん?」
「勝手に誰でも略そうとするんじゃないの。失礼でしょ」
特にロロナとパルフェは性格が似てるのか、すぐに打ち解けた。ココットはあたしより年下で、ロロナ以上に子供っぽく見えるけど、姉のレネットが調合や採取で忙しいのでほぼ毎日お店番を一人でしてるらしく、わりとしっかりしている。
「きれいな金髪!いいなー」
「あ…ど、どうも…」
四つか五つくらい年下のココットに対してもリオネラはこんな調子w
「レネットさん…難しい…レネさん…レトさん?」
「略さなくていいわよ。そんな長い名前でもないし」
レネットもさすがに困惑した様子。
「本当、ロロナって無駄なことばっかり考えるんだから」
「えー。でも愛称があったほうが親しみが…」
「もっと親しい仲になったら考えなさいよw」
「そういうことね。略すくらいなら“さん”付け要らないでしょ」
レネットでいいわ、と彼女もロロナの案(?)を一蹴した。
「レネット。どーしてそんな隅っこにいるの?」
訝しげに尋ねるパルフェ。
「別に…いいでしょ。どこにいても」
恵まれたryだけど自慢するようなところがないのは、ある意味リオネラと同じか。
「こーんなに広いのに、もったいないよー」
そう言ってパルフェにひっつくココット。
「やめなさいよ。あんまりベタベタすると貧乏がうつるわよ」
レネットは妹をパルフェから引き剥がそうとする。
「う、うつらないもん…ひどいなあ」
貧乏は否定しないのか…どうやらパルフェが店主なのは込み入った事情がありそう。
「パルフェちゃんのお店も人気が出てきたし、きっとそのうちお金持ちになるわよ」
フローレがフォローするが、
「お店うまくいってるの?…いいなぁ」
ロロナは言うほど貧乏ではないけれど、アトリエは取り潰しの危機に瀕している現状。今回の王国依頼は意外と早く片付いたから、今はのんびり温泉に浸かっていられるけど…
「いい…とは言えない状況だけど…が、頑張ってるよ」
「よしんば奇跡的に100万貯まっても、借金返したら無一文だものね。私なら耐えられないわ、そんな生活」
借金があるのか…100万コールっていったら、アトリエの土地くらい建物ごと買い取れる金額だわ。それを必死に稼いで丸々没収されるんじゃたまらないわね。
「う、うぅ…」
レネットに散々言われてますます落ち込むパルフェ。
「…ちょっと」
「え?」
ロロナやココットたちがああでもないこうでもないとパルフェを励ましている間に、あたしはレネットに声をかける。
「余計なお世話かもしれないけど…あの娘とはどうなの?」
「は!?…な、何よ急に…パルフェのこと?」
「仲が悪いわけじゃなさそうだし…かといって恋人にしては変に距離とってるし」
「こっ…あ、あなたには関係ないことよ」
レネットが一瞬見せた動揺からも、明らかにパルフェを意識してるのがよくわかる。
「関係ないからあえて言うのよ。…多分、あたしもあなたと同類だから」
まるで鏡を見てる気分だった。ロロナに対して素直になれなかったあたしと似てて。…それにしてもレネットは極端すぎる。
「同類ってどういう…まさかあなたもパry」
言いかけて“しまった”といった様子で口を閉ざすレネット。“も”というのは当然そういう意味だ。
「彼女のこと…もし真剣に想ってるなら、今のままじゃマズいんじゃない?」
「…勝手に妄想しないでくれる?」
「はいはい。じゃあ妄想ってことでいいから一応聞いて」
リオネラが現れて、あたしはようやく自覚した。パルフェの周りにもフローレやココットがいる。あたしの勘が当たっていれば、たぶん二人とも…
「意図的に傷つけたくてしてるんじゃなければ、ほどほどにしときなさいよ。そんなんじゃ彼女取られちゃうわよ」
「うぐっ…」
興味ないふりして黙っていたレネットが呻くように声を漏らす。
「あなたの相手は…ロロナって娘?」
「…まあね」
どちらからともなくため息ついて、レネットとお互い密かに笑った。

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