リトル・ウィッチ マーシュ

□トトリノノンのケーキ?
1ページ/3ページ

あたしはクーデリア・フォン・フォイエルバッハ…って別に家名なんか関係ないけど。街のガキ共と同レベルの、あの女(アストリッド)みたいにバカにしてる連中もいるし、名乗る相手を選んだほうがいいのは確かね。
…まあ、あたしが望む望まないにかかわらず庶民のやっかみの対象となるような家に生まれて、心を許せる友達なんてロロナのほかには誰もいなかった。だからこそ、そんなこと少しも気にせず接してくれる彼女にひかれた。
王国からの命令でロロナがヴァルチャー狩りをさせられたとき、近くの森から一時的に魔物が全くいなくなった。もともといた弱い魔物たちはヴァルチャーに追われてしばらく姿を消していたから、あたしとロロナで(リオネラもいたけど)ヴァルチャーを根こそぎ退治したら魔物は何もいなくなったってわけ。
…で、あたし達がヴァルチャーを追い回して苦労してる間に、アストリッドは呑気に森を散策していて面白いものを見つけたなんて言い出して…半信半疑でついて行ってみると、森の奥に温泉があった。
王国一の怠け者のアストリッドが自力で掘り当てた…なんてことあるはずもなく、でも明らかに人の手で作られた露天風呂の体をなしている。あの女は「秘湯だ」と嬉しそうに語り、結局あたしたち三人(あたしとロロナとリオネラ)も温泉に入ってみた。
近くの森なんてロロナと一緒に隅々まで踏破したつもりだったし、王国祭の催し物でも使われるくらい普通の人が普通に来るような森なのに、誰も知らない温泉があるなんておかしな話だわ。
「えーと…確か、こっちの方だったよね」
だからロロナと(リオネラもいるけど)あらためて来てみたの。…あの女が何か小細工した可能性もあるんじゃないかと思って。たとえば今までほかの人に見つからないように隠してたとか、アストリッドにしか見つけられないように仕掛けを施したとか…ロロナはともかく、あいつの非常識な錬金術ならそれくらいできそうな気がするし。
「別に硫黄のニオイとかしないわよね…」
「くーちゃん。硫黄は無臭だよ。ニオイがあるのは硫化水素」
「あ、そう」
ロロナも錬金術に慣れてきて、妙に専門的な知識が身についたみたい。
「な、何か聞こえない…?」
いつもの変な猫のぬいぐるみを抱えて、怯えたように言うリオネラ。
「ウォルフでも出た?」
ヴァルチャーは一羽残らず退治したつもりだったけど、もともといた弱い魔物が戻ってきたのかもしれない。
「違う…人の声だよ!」
ロロナの言うとおり、耳をすますと楽しそうな女の子の声が複数聞こえてきた。
「あら、先客がいるみたいね」
湯気のたつ水面…というかお湯そのものが見えてきて、その中に知らない女の子たちがいる。確かに温泉はあった…けど、
「あっ、こんにちは…温泉に入りに来たの?」
見慣れない女の子が、四人…みんなアーランドから来たのかしら?
「当たり前でしょ。女の子だけで覗きに来るわけないじゃない」
こちらが答える前に、四人の中で一番年上っぽく見える娘(リオネラ並みのry)がツッコむ。
「こんにちは…ここ、わたし達以外にも知ってる人いたんだね」
「…ま、あの女の私有地じゃないんだから、それが普通よね」
知らない人の前で裸になるのも何か恥ずかしい気はするけど、相手も女の子だけだし全く面識がないから、逆に変に意識しなくて済むとも言える。
「お、お邪魔します…」
リオネラの人見知りも相変わらず。ぬいぐるみをお湯につけるわけにもいかないから、猫二匹(?)はお風呂の外に置いてきた。
「どーぞっ。こんなに広いから邪魔になんてならないし」
最初に声をかけてきた女の子。この娘は一番年下っぽい…けど私よりry
「だからって泳いだりするんじゃないわよ。ココット」
ココット…っていうのはあの娘の名前かしら?
「皆さん、はじめまして。わたしはパルフェ・シュクレールっていいます。黒猫魔法店の…一応、店主してます」
セミロングの髪の女の子が名乗った。
「パルフェ…ちゃん? わたしはロロライナ・フリクセル。ロロナって呼んで」
ロロナは早速パルフェの名前をどう略そうか考えてるみたいだけど、そんなことより…
「黒猫…何ですって?」
あたしが訊くと、リオネラは後ろに置いてきた黒猫のぬいぐるみをちら、と振り返って見た。
「黒猫魔法店です。わたしが作ったお薬とか、いろいろな道具を売ってるの」
聞いたことない店だけど、なんだか…
「ちょっと、あんただけちゃっかり宣伝するんじゃないわよ。うちの店のほうが黒猫魔法店より遥かに上質な品物が揃ってるんだから」
「ココットだよ。スマイル魔法店もよろしくねー♪」
「えっ、みんな店長さんなの!?」

(→次のページへ)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ