色彩八陰陽師@〜別れが導く出逢い〜

□第二部〜流星のように集まるる〜
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1.旅立ちの朝







「結菜ちゃん、本当に行くのかい?」
「はい。今までお世話になりました。このご恩は一生忘れません。いきなり転がり込んだ私にたくさん親切にしてくださって……」
 白凪家惨殺事件――あれから1年。結菜は青河家の領主、愁閲(しゅうえつ)と話をしていた。
「…しかし……やはり女の子が旅をするには今の世は危険すぎる。君が行かなくとも、私の家臣たちがやってくれるのだよ?」
「大丈夫ですよ。…確かに、不安で分からないことばかりですが……男は“私と”会うことを望んでいます。だから……」
「……分かった。分かったよ、結菜ちゃん。……しかし、どうしても行きたいというなら1つ条件がある」
「…条件……?」
「篤斗」
「…はっ」
 首を傾げた結菜の前に一人の青年が現れる。
「彼は緑榮篤斗(りょくえい あつと)。とても腕が立つ剣豪だ。旅に出るというなら彼を連れて行きなさい」
「…え。あ、で、でも、ご迷惑なんじゃ……」
「俺は別に平気だ」
 結菜が迷いを口にすると、そっけない返答が返ってきた。
「彼を連れていかないと言うのなら、私は君を旅に出すわけにはいかない。私の親友……龍清の大事な娘なんだから」
 愁閲は厳しい目つきになって結菜を見据えた。
「……あの…緑榮さん……」
「篤斗でいい」
「…じゃあ……篤斗さん。本当に、ご迷惑じゃない、ですか……?」
「もちろんだ」
「……さて。どうする、結菜姫?」
「私………旅に出たいです。…篤斗さん、ご迷惑お掛けしますがよろしくお願いします」
 ぺこりと篤斗に頭を下げ、愁閲の方に向き直る。
「……結菜姫、くれぐれも無理はするんじゃないよ。私たちはいつでも君の味方だ。…さあ、気をつけて行っておいで」
 愁閲さんは、やっと目元をゆるめて微笑んでくれた。
「ありがとうございます……! 愁閲さん……!!」
 深くお辞儀をして小さな巾着を手に取り、扉の所でもう一度頭を下げて小走りで玄関へ向かう。
(残された時間はたったの一年。ぐずぐずしてはいられない…!!)
 扉から駆け出していった結菜を追いかけようと立ち上がると、愁閲さんに呼び止められた。
「篤斗。結菜ちゃん…いや、結菜姫を頼んだぞ」
 愁閲さんの瞳は真剣そのもので、本気で結菜を案じていることがヒシヒシと伝わってきた。
「もちろんです。俺の命に代えても……守り通してみせます」
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