カラフルラプソディ
□さっきのは特に可愛かった
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「――おっちゃーん、2人なんだけど空い、て、る…」
「あ…」
『ん?』
音を立てて開いた扉の方に視線を向ければ、先程決勝を戦ったチームのジャージが目に入って。
高尾と緑間は店内の誠凛に気付き固まり、誠凛も突然現れた秀徳1年コンビに固まってしまった。
「…店を変えるぞ高尾」
「あっ、オイ…!」
いち早く動いたのは緑間で。この空間から早く出たいとばかりに外に出るが、外はまさかの暴風雨。先程よりも更に強くなったように感じる。
これでは外に出るのは少し危険かもしれない。
「……あれっ?もしかして海常の笠松さん!?」
緑間と同じように外の大荒れの天気を目の当たりにしてフリーズしていた高尾だったが、店内にいる笠松の姿に気付き驚いた様子を見せ。
月バスでも取り上げられたこともある笠松に、同じポジションとして是非とも話を聞きたいと1人盛り上がる。
「え…てか正直今、誠凛の祝勝会的なムードだったんだけど…」
「全っ然気にしないっす!さ、笠松さんこっち!こっちで話聞かせて下さいよー!」
「あ、ああ…別に良いけど…」
高尾の押しの強さに少々引きずられながら、笠松は席を立ち高尾と共に別のテーブルへと移動する。
となると、開いた席に座ることになるのは―――
『……空気が重い』
笠松の座っていた席に緑間が着いて。黄瀬、火神、黒子、結衣、そして緑間が揃ったこのテーブルの纏う空気がかなり重たいものになってしまっていた。
結衣がリコに助けを求める視線を送ったが、リコから返ってきたのは「結衣ちゃん頑張って(ハート)」というジェスチャーのみ。このままその席にいなさい、ということらしい。
『……真太郎も何か注文したら?はい、メニュー。涼ちゃんは?』
「あー…オレもう結構一杯だから今食べてるもんじゃだけで良いっス」
「よくそんな気持ち悪いものが食えるのだよ、まるで…」
「あー!!それ言ったらダメっスからね!?」
「お待たせいたしました。こちらが豚玉、いか玉、ミックス玉、豚キムチ玉、たこ玉、明太チーズ玉、牛スジ玉になります」
「お前達3人でこんなに注文したのか!?」
『違うよ火神君1人分』
「僕は焼きそばを注文しました」
ありえん…と眼鏡を上げる緑間に、黄瀬も似たような思いらしく表情は引きつっていて。
結衣と黒子は、もう火神の食べる量の多さに慣れてしまっているため特に驚いた様子は見られないが、それもまた緑間と黄瀬は引いているようだった。
「藍原、お前の分も混ぜるぞ」
『うん、よろしく』
「なんか…全部混ぜると凄いですね…」
注文した全てのお好み焼きのタネを1つに混ぜ合わせる。焼いちまえば一緒だろ、と火神が手を動かしていく。
確かに焼いてしまえば同じだろうが、この量を一気に焼き上げるには相当大きなお好み焼きを作らなければいけなさそうだ。
『はい、油塗ったよ』
「ん、サンキュ」
『うわ、めちゃめちゃおっきいお好み焼きになるね…テツ、焼きそば作れる?』
「はい、ここにスペースがあるので大丈夫です」
『火神君、これひっくり返せる?』
「あー…まあ何とかなんだろ。お前やるか?」
『いや、さすがに無理…重そうだし…火神君に全部任せる』
「おう、焼き上がるまで待ってろ」
「ねえオレの前で仲良しアピールしないで下さいっス!!涙が止まらない!!悔しい!ムカつく!!火神っちそこ代わってマジで!!」
「は?……お前コレひっくり返したいのか?」
『火神君に任せておけば大丈夫だから。涼ちゃん自分のもんじゃ焼き食べてて』
「…煙が…煙が目に染みるっス…」
“普通に”繰り広げられる3人のやり取りに悔し涙が止まらない。結衣が楽しそうなことは良いことだが、そこに自分がいないということが悔しくて悲しくて堪らない。
火神マジそこ代わりやがれと黄瀬の中の嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。
『お好み焼き食べたかったの?』
「…違うっス…」
「結衣ちゃーん?ちゃんと食べてるー?」
『はい!火神君のお好み焼きに混ぜてもらって、一緒に焼いてます!』
「うっわ!なにそのデッケーの!?見て見て水戸部!あれやっべー!」
「火神…それちゃんと返せるのか…?」
「まあ、何とかなると思う、です」
正直ここまで大きくなるとは思っていなかったが、きっと何とかなるだろう。力技でひっくり返せば、きっと。