カラフルラプソディ

□さっきのは特に可愛かった
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「あ」

「あ」

『あ』

「〜〜〜〜〜!?」



結衣達3人がお好み焼き屋に入ってまず目に入ってきたのは、何故か黄瀬の姿。しかも、声にならない声を上げて顔面蒼白になって3人を見ていた。
もちろん、黒子は黄瀬の行動のその意味を瞬時に察し、小さくため息をついた。



「結衣っちーー!なんでなんでなんで??なんで今火神っちと相合い傘してたの?なんで?近すぎじゃなかった?くっつきすぎじゃなかった?なんで?ずるい火神っちずるい俺も結衣っちと相合い傘したい!」

『ちょっと涼ちゃんうるさい!他のお客さんに迷惑でしょ!?』



何故黄瀬がここにいるのかという疑問の前に喧しさが先に立った。うるさい。とにかくうるさい。早口でまくし立てるように言われてよく聞こえなかったがうるさい。



「ひ、酷いっス…」

『公共の場で止めてよね…って、どうして涼ちゃんがこんな所にいるのよ…あれ、笠松さんも?』

「試合、見に来てくれたらしーぞ」

『…まあ真太郎の試合もあったしね。敵情視察ってやつ?』



「それもあるけど、1番は結衣っちに会いに来たんスよ〜!」と笑う黄瀬に結衣は肩を竦める。
火神や黒子達もすでに何度か見たやりとりにまたかと呆れたように笑った。相変わらずである。



「ほら、騒いでないでとりあえず座りなさい。黒子君達も…あら、3人が座れる席が…」



リコが見渡すが、日向達が座っているテーブルと、小金井達が座っているテーブルはすでにいっぱいになっていて。
他の座席もお客さんがいて満席状態であり、結衣、黒子、火神の3人が座れる場所がない。



「結衣ちゃんなら細いからあたし達の方に詰めれば座れると思うけど…」

「あっ!それなら俺達と相席どうっスか?笠松先輩、良いっスよね?」

「あ?ああ…別に良いけどよ」

「よし決定!結衣っち俺の隣ね!」

『…テツそっちに座って。わたしここに座るから』

「ちょ、ええ!?俺の隣って言ったよね!?」



黒子を黄瀬の隣に、そして火神を笠松の隣に座らせる。そして自分は黒子と火神の間になる部分に座る。
彼女が座る部分は鉄板の温度調整のつまみやらコードやらが足部分にあって座りにくい場所になっていて、彼女なりに2人に気を使ったらしい。足の長い火神は恐らくつまみやコードに引っ掛かってしまうだろうし、黒子も試合で疲れているのだから楽な姿勢でいられるようにしてあげたかった。



『笠松さんすみません、お邪魔します』

「あ、ああいや…別に…」



何故か結衣を直視出来ないらしい笠松はあからさまに目を反らしてしまう。そんな笠松の様子に火神と黒子は不思議そうな表情をしているが、結衣は理由が分かっているらしく特に気にした様子は見られない。



「笠松先輩、女の子がちょっと苦手なんスよ。だから可愛い可愛い結衣っちを見れないんス」

「あ、そうなんですね」

「黄瀬、余計な事言ってんじゃねーぞ…」



「俺はいつまでも結衣っちのこと見ていたいけどー!」とハートを飛ばす黄瀬だが、当の本人は火神とメニューを見て何を注文するか相談していて黄瀬の言葉を聞いていないらしい。
2人で1つのメニューを覗き込んでいるため必然的に距離が近くなっていて。

え?距離近くない?さっきの傘の時も思ったけどこの2人近くない?と黄瀬が思うのも仕方ない。



「…10枚は食えるな。でもいちいち10枚焼くのメンドクセーから一気に纏めて焼いちまうか…」

『ねえ火神君。わたし1枚分も食べられないからさ、わたしの分も火神君のお好み焼きに混ぜて焼いて?わたしそこから摘みたい』

「ん、お前何食いたい?」

『何でも良いよ。って言うか混ぜちゃうんでしょ?』

「おう、じゃあ適当に注文すっぞ。黒子は決まったのかよ?」

「はい、決まりました」

「すんませーん注文いいっスかー」

「ねえ待って。ちょっと待って。なに今のやりとり」



目の前でされた会話に頭が痛くなる。何あのお互いのことよく知ってます感。仲よさ気感。



「普段から結構あんな感じですよ」

「……」

「黄瀬君、顔怖いです」



およそモデルとは言い難い表情になってしまっている。
そんなことに気付いてもいない結衣と火神は店員へ注文をしていて。豚玉イカ玉ミックス玉豚キムチ玉…とまるで呪文のように唱える火神に笠松は唖然としていた。



「…まさか、付き合ってたりなんか…」

「していませんよ」

「……」



それなら良いかとホッとしたのもつかの間、このままいったら付き合ってしまいそうな気がしてならない。あの距離感は不安になる。
同じ学校と違う学校、というだけで物理的な距離が黄瀬と結衣の間にはあるのに、結衣と火神は同じクラス。
不安になる。無理。



「なんだかなぁ〜…」

「…まあ、頑張って下さい黄瀬君」



そんなことを考えていると、再び店の入口がガラガラと音を立てて開いた。









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