カラフルラプソディ

□特訓の成果みせてよね
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『4回戦は108対41…っと。今回も安心して見ていられましたね』

「そうね……でも、なんで相手の高校は終始ペコペコしながら試合していたのかしら?」

『あはは…』



4回戦の相手、明常学院。
メンバーのうち4人は、以前黄瀬、火神、黒子にストバスで瞬殺された、あの彼ら。

試合会場にやって来た時までは「誠凛なんて新設校ボコボコにしてやるぜぇ!」と意気込んでいた彼らだったが、火神と黒子、そして結衣の姿を見た途端に震えだし、腰が引けっぱなしで試合をしていた。
もちろん、今回も瞬殺である。



『ま、まあ試合には快勝出来たから良いじゃないですか』

「それもそうね。さてみんな、さっさと片付けなさい!早く行くわよー!」

「え、行くってどこに?」

「俺達の試合はこれで終わりだろ?あとは帰るだけじゃ…」

「良いから、上に行くわよ」



リコの言う上とは観覧席のことである。どうやら、これから行われる試合を観戦したいようだ。
結衣は今日のこの会場の試合スケジュールを把握しているため、リコがどの試合を観戦したいと思っているのか瞬時に察したが、火神達は首を傾げる。



『これから、秀徳高校の試合があるんですよ』

「!」



秀徳高校、という言葉に反応したのは日向達2年生。そして黒子。
他の1年生達はピンと来ないようで首を傾げている。

そんな1年の様子を見て、日向が説明を始めた。



「決勝リーグを勝ち抜いて、東京都から選ばれるのは3校だけっつーのはお前達も知ってるよな」

「は、はい」

「その3校は、ここ10年全く同じなんだよ」

「東の王者・秀徳、西の王者・泉真館、そして北の王者・正邦よ」

『1位は毎年変わっているみたいですが、力が拮抗しているためか4位以外は寄せつけない。それで、秀徳・泉真館・正邦の3校は東京都不動の三大王者と呼ばれているそうです』

「その三大王者の中の1校、秀徳高校がこの会場でこれから試合をするのよ。ふふ、今日はすごいもん見れるわよ。何てったって……」

『……キセキの世代、緑間真太郎が加入しましたから、ね』



結衣の言葉に緊張が走る。
海常の黄瀬と同じキセキの世代のメンバー。その実力は一体どれほどのものなのか。



「でっ、でも!先輩達も去年決勝リーグまで行ったんですよね?」

「ああ…まあ手も足も出なかったけどな」

『……』



去年の試合データを見せてもらった結衣は、日向の言葉の意味が分かり表情を曇らせる。
2年生達も表情が暗い。彼らにとって、苦い経験だったのだ。



『……皆さん、来たみたいですよ』

「東の王者、秀徳高校…」



会場の空気がガラリと変わったのを感じる。チームとしての威圧感が強い。
その中でも、特に威圧感を強く感じるのは一際目立つ緑色の髪の毛の男。



『真太郎…』



名前を呼ばれたのが聞こえたのか、緑間の視線が結衣とぶつかる。
だが、視線の間に割り込む大男が1人。



「ちょっとルーキー同士挨拶してくるッス」

『え、ちょ、火神君!?』



結衣の制止も届かず火神は緑間に近付いていく。
緑間も自分に向かってくることに気付き、眉間にシワを寄せた。



「よォ、お前が緑間真太郎か」

「そうだが……君は誰なのだよ」



海常との練習試合から、インハイ予選の試合もいくつかこっそり観に行っているため、本当は火神のことを知っている。
けれど、緑間のプライドなのか、知らない、と言い捨てた。お前になど興味はないとでも言うように。



「誠凛高校10番、火神大我!お前のことは聞いてるぜ。黄瀬と同じキセキの世代、緑間真太郎!」

「…」

「先輩達のリベンジ、果たさせてもらうから覚悟しとけよ!」

「リベンジ?フン…無謀なことを…」

「あ?」

「あっれー誠凛さん、その先輩達から何も聞いてないの?君達の先輩は、去年の決勝リーグで三大王者にトリプルスコアでズタズタにされたんだぜ?」



緑間の隣に黒髪の男が並ぶ。
人懐こさが滲み出る笑みを浮かべる彼は、秀徳高校の10番、高尾和成。



「息巻くのは勝手だが、実力の差は圧倒的なのだよ。仮に決勝で当たるとしても、歴史は繰り返されるだけだ」

『……』

「…それは、違うと思います」

「っわ、コイツいつの間に…(マジで影うっす…)」

「勝負はやってみなければ分からないと思います、緑間君」

「……黒子」



突然現れた(ように感じた)黒子に高尾は驚きの表情を浮かべた。
しかし、緑間は表情を変えず、真っすぐに黒子を睨みつける。



「やはりお前は気に食わん。特にその何を考えているのか分からない目がな」

「そうですか」

「言いたいことは山ほどあるがここでは言わん。虚しくなるだけだからな。まずは決勝まで来い」



黒子にそう言い放ち、再び結衣に向き直る。
結衣とまた視線がぶつかると、より一層眉間のシワが深くなった。



「お前もだ結衣。何を思ってお前が“ソコ”にいるか知らんが…お前も、黒子と同じ考えか」

『…まあね』

「フン…お前はもう少し賢いヤツだと思っていたが……」



緑間が結衣の隣に立つ。
2人が並ぶと、緑間の大きさが更に際立った。



「残念なのだよ、結衣」

『……』

「はーい、キミが藍原結衣ちゃんね!真ちゃんから話は聞いてるよー!っていうかマジ可愛い!え、すっげー美人さんだね!あ、俺は高尾和成って言いまっす!ま、藍原ちゃんなら知ってるよね!」

『は、はあ…』



結衣と緑間の間に流れたピリッとした空気を打ち消すかのように乱入する高尾。
あまりの勢いにさすがの結衣も目を丸くした。



「真ちゃん、あんなこと言ってるけどホントは誠凛さんのことすっげー注目してるんだぜー」

「適当なことを言うのはよせ高尾」

「ほら1年!いつまで喋っている!!さっさとアップを始めろ!」

「………黒子、結衣。よく見ておけ。お前達の考えがどれだけ甘いものか、思い知らせてやる」

『…楽しみにしてるよ』



緑間のやる気スイッチが入ったらしい。
緑間の後ろで高尾が肩を震わせていた。どうやら笑っているらしい。

誠凛も秀徳の試合に備えて観覧席に移動する。コート全体が見渡せる良い席を確保出来た。



「しーんちゃん!なに、もしかして今日スタートから出るの?朝は占いの結果が悪いから出ないって言ってたのに」

「シュートタッチを確認したくなっただけだ」

「とか言って、ホントは藍原ちゃんに良いところ見せたいからじゃねーの?」

「変な勘繰りはよせ」

「……別にいーけど、いつも通りちゃんとシュート決めれば。占い悪いから、なんて言い訳になんねーからな」



秀徳のキャプテン、大坪が緑間に睨みをきかせる。
緑間は肩をすくませ、ずっと手に持っていたものを秀徳のベンチに置いた。



「心配は無用なのだよ。俺の運気は――ラッキーアイテムで補正されている」



秀徳ベンチに置かれたラッキーアイテム、くまのぬいぐるみ。
本日の緑間のラッキーアイテムが、コートに入る緑間の背中を見守っていた。














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