カラフルラプソディ
□特訓の成果みせてよね
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「第2Q残り3分で30点差…」
「……何と言うか…さすがって感じね…」
秀徳高校の試合運びはまさに安心して見ていられるものだった。
得点を次々に重ねていき、連携ミスも特に見られない。
「やってることは俺達とたいして変わらないように見えるのに……凄い簡単そうにバスケやるよな…なんでだろ?」
『ミスが無いからだよ』
「ミス…?」
降旗が呟いた言葉に結衣が反応した。
目線は試合から反らさずに、降旗の疑問に答えていく。
『バスケは常にハイスピードでボールが行き交うスポーツ…そんなスピードの中でパスを取り損ねてしまうことだって有り得る…だけど、強いとこって例外なく投げる・取る・走るみたいな当たり前の動きからキッチリしてるの』
降旗くん達が簡単そうに見えるってことはつまり、基本がキッチリ出来てるってことなのよ、と言葉を続けた結衣に降旗達1年はただただ感心した。
やはり強豪校はレベルが違うのだと背中が冷たくなった。
だが、レベルが違うというのはそれだけではなかった。
「調子良いみたいだな、緑間」
『え?』
「ずっとシュート決まってる。相当調子良いんだな」
「え、そうなんですか?」
「いや何でお前が聞くんだよ」
『ああ、そういうこと。真太郎の場合、調子が良いとかそういうことじゃないんだよね』
結衣の言葉に火神は怪訝そうに眉をひそめた。
どういう意味だ、と火神の目が無言で語っている。
「僕達、緑間君がシュートを外しているところを見たことがありません」
『そういうこと』
「「「………は?」」」
そんな話をしている間も緑間は軽々と3Pシュートを決めていく。
結衣達の話に嘘はないらしい。
だとしたら、やはりキセキの世代とは恐ろしい存在である。
『それに…』
「?」
結衣が何かを呟きかけた瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響く。
153対21と、秀徳が圧倒的なまでの力の差を見せ付ける形となった。
「お前、何か言ったか?」
『…ううん、なんでもない』
ふと、緑間が結衣達の座っている方を見上げた。結衣、黒子、火神、そして緑間の視線が交錯する。
始めに視線を逸らしたのは結衣だった。
『リコ先輩、わたし向こうの試合見てきますね。多分今頃第3Qあたりだと思うので』
「あ、待って!そっちはあたしが行くわ!結衣ちゃんにはもう1つの方に行ってほしいの。ビデオもお願い」
「んー?カントクと藍原ちゃんドコ行くのー?」
結衣の言葉に一緒に立ち上がったリコを見て、首を傾げたのは小金井で。
「この後あたし達と試合する高校が向こうのコートで試合してるから偵察よ」
「この後?試合ならオレ達さっき終わった…」
「何言ってるのよ。今日はもう一試合ある…って、火神昨日のミーティングちゃんと聞いてなかったな…」
「えっ、いや、その…!!」
『予選4回戦・5回戦と、準決勝・決勝はそれぞれ同じ日にやるんだよ。わたし達は次が5回戦だから、もう一試合あるってわけ』
結衣の説明にヘェーと初めて聞きました、と言わんばかりの反応をした火神がリコに頭をしばかれる。
話を聞いていない火神が悪い、と結衣はため息をついた。
そしてIH予選5回戦、対白稜高校。
第4Qまで試合は進んでいるが、点数が83対83と拮抗していた。
「(まずいわね…)」
リコは苦い表情で試合を見つめていた。
選手それぞれに予選4回戦の試合の疲れが残っているのか、動きにキレは見られない。
それに、
「(白稜を格下と見て油断したのもあるし…結衣ちゃんを準決勝対策で出しちゃったのもまずかったわね)」
結衣は今、誠凛ベンチにはいない。
誠凛がこの試合に勝ったら次は準決勝。その準決勝で当たると思われる高校の試合を見に、そちらの方の会場にビデオカメラを持って行かせたのだ。
「みんな…」
点数は拮抗しているが時間があとわずか。
このままではまずい、と思ったリコだったが、次の瞬間ほっと安心したように息を吐いた。
「だアホ!!全員声出てねーよ!!疲れてんのは相手も一緒だ!大人しくなる前にもっとマシな言い訳考えろバカヤロー!!」
「お、おう!!」
「……さすが…日向君」
『キャプテンのクラッチタイムは頼りになりますね。良い喝です』
「結衣ちゃん!向こうは?」
『こっちよりも先に試合が始まったので、終わるのも先でした。ビデオもばっちりですよ!……でもこれは…』
スコアボードを見て結衣の眉間にシワが寄る。
白稜のデータは当て嵌まりませんでしたか?と結衣が心配そうに聞いたが、結衣が集め纏めた白稜のデータは完璧なものだった。だが、誠凛側の選手の疲れが相当溜まっていたようで、結衣のデータを活かしきれずここまで苦戦を強いられているらしい。
「あと2分だ!気合い入れろだアホ!!!」
日向の言葉で目に力が宿る。
何とか火神がゴールに押し込んで2点リハインド。
結局、この2点を誠凛は守りきりなんとか準決勝へと駒を進めた。