カラフルラプソディ

□頼りにしてるわよ
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「……」



通話の切れた電話をしばらく眺める。
久しぶりに聞いた彼女の声は、電話越しではあったが変わらない優しいもので。



「…やはり無理にでも連れてくるべきだったかな」



そんな考えがよぎる。
自分達を避けていた彼女は、バスケを嫌いになりそうだと赤司の前で涙を流した彼女は、今再びバスケ部のマネージャーとして戻ってきた。出来ることなら自分の元でマネージャーをして欲しかったが、彼女は自分はおろか他のキセキの世代の誰の元にもついて行かなかった。それなら良いかと思ったこともあった。けれど、やはり。



「いや、連れて来ても結衣は僕のところには来なかったかな」



彼女を突き動かしたものは、自分のバスケではない。
黒子と、彼が見つけた新しい光に惹かれたから戻ってきたのだ。

実に、面白くない。



「こんなに僕の思い通りにならないのは結衣だけだよ」



面白くないと思うのに、そんな結衣が面白いと思ってしまう自分がいる。
黒子もそうだが、結衣の才能に最初に気付いたのは自分だ。中学1年のあの時、彼女の中にある才能に気付いて伸ばすことが出来た。

彼女自身も赤司のおかげであるということを理解している。感謝もしている。けれど、赤司に対して…キセキの世代に対しての怒りもある。

だからこそ、そんな赤司に対してありがとうなどと素直にお礼を言う結衣に笑ってしまいそうになる。



「いつ、君に会えるか楽しみにしているよ」



一番早ければ夏の全国大会で再会出来るだろう。彼女が、いや彼女が選んだチームが勝ち進んで来られたらの話だけれど。
東京には2人のキセキの世代が残っている。その2つのチームを下して勝ち進んでくるのは誠凛などという無名のチームには難しいことだろう。

結衣の力を、誠凛というチームが使いこなすことが出来るとは思えない。それが正直な思いだ。



「征ちゃん、夕食の時間よ。そろそろ行きましょう?」

「ああ、もうそんな時間か。ありがとう」



あら、誰かに電話していたの?と赤司の新しいチームメイトが問いかける。
その問いかけに、赤司は小さな笑みと共に答えた。



「ああ、僕の大切な人さ」



赤司のその答えに、新しいチームメイト――実渕玲央は目を丸くして、1年生でありながらレギュラーそして部長にまでなった彼の後ろ姿を見つめた。








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