カラフルラプソディ
□頼りにしてるわよ
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「…なぁ、黒子」
「なんですか?」
昨日の練習試合の疲れを体中に感じながら、なんとか持ちこたえた午前の授業。4限の終了を知らせるチャイムが鳴ると、火神はすぐさま大量のパンを机の上に並べて。黒子もいつものようにそれだけで本当に足りるのかと言いたくなるような量の昼食を机の上に出す。
結衣は、そんな2人の違いに苦笑いを浮かべながらも『リコ先輩から入部届貰ってくるね』と席を離れた。
結衣が教室を出て行ってからしばらく。
大量にあった昼食のパンを平らげた火神は、神妙な面持ちで黒子の方に振り返った。
「藍原って、どうして誠凛に来たんだ?」
「…?」
「アイツが普通とは違うっつーのは分かった。オレは…すぐ頭に血が上っちまうから、アイツみたいに試合状況を冷静に見れんのはスゲーと思う」
「(火神君が褒めてる…?)」
「だからこそ、不思議でならねぇ……それだけの力を持っていながら、何でバスケから離れようとしたんだ」
「………」
黄瀬をはじめ、他のキセキの世代からも一緒に来ないかと誘われていたらしいが、結衣は全て断ったと聞いた。
そしてバスケから離れると。そのために新設校であった誠凛に進学を決めたとは聞いていたが、黒子は詳しい理由までは聞いていない。
理由は、何となく察しているけれど。
「分かりません……ただ…」
「……」
「結衣さんは、前と変わらずバスケが大好きということは分かります」
「……は?」
「僕は、他のキセキの世代よりも結衣さんとの付き合いは浅いです。だから、結衣さんのことを全て知っているかと言ったら……それは違う」
黒子自身、レギュラーになったのは1年の終わり頃。他のキセキの世代よりも結衣との付き合いは短い。
レギュラーになってからは大体一緒にいたように思うため、そこまで時間の差は感じないけれど。
「結衣さんがバスケ部のマネージャーを始めたのは、ある人に誘われたからだと聞きました」
「…それって黄瀬か?」
「いえ。黄瀬君がバスケを初めたのは僕がレギュラーになって少ししてからなので…黄瀬君ではないです」
「(黄瀬と藍原ってずっとベッタリだと思ってた)」
「…詳しいことを知りたいのなら、直接本人に聞けば良いじゃないですか」
「はァ!?べ、べつにそこまでして知りたいわけじゃねぇよ!!」
「…あ、結衣さん戻ってきましたよ」
黒子が教室の入口の方に視線を向けると、そこには紙を片手に持った結衣の姿。
ちゃんとリコから入部届を貰えたようだ。
『ん?どうしたの?』
「な、なんでもねぇよ!」
『はぁ?』
「なんでもないみたいです」
『……何なの2人して』
火神は何か焦っているし、黒子は何故かにこやかだし。
意味が分からないが、もう授業も始まりそうなので深く追求出来ない。急いで昼食を食べなければ。
黒子がなんでもないと言うのなら何でもないのだろうと自己完結した結衣は、卵焼きを口の中に放り込んだ。