カラフルラプソディ
□よろしくお願いします!
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「「――っしゃあああああ!!」」
『……』
誠凛ベンチメンバーの喜びの叫びが体育館に響く。小金井も体いっぱいに喜びを表しているのが分かる。
リコが日向達に向かって親指を上に突き出した。
「ははは…嬉しい通り越して信じらんねぇ…」
日向達も、リコに向かって同じように親指を出した。
正直に言えば、もう体力は限界だった。立っているのもやっとだったりする。
『…っ、はぁ…』
最後の10秒。
息をするのを忘れてしまうくらい試合に見入ってしまった。試合が終わった今、自分が出ていた訳ではないのに疲労感が半端ではない。
試合を見て、ここまで自分も一緒に感情を移入したのはかなり久しぶりのことで。こんな感覚、もう忘れてしまっていた。それくらい久しぶりの感覚だった。
『勝つことが当たり前だったから、か……』
「やったな日向、伊月、水戸部ェーー!」
「ちょ、痛ぇよコガ!!」
「先輩達やっぱすげー!」
「本当に勝った!」
「お疲れ様、日向くん」
「ああ、サンキュー…」
あんな風に試合に勝った喜びを全員で分かち合っているあの姿が、ひどく眩しく見える。
けれど、あの輪の中に黒子がいることが結衣はとても嬉しく感じていた。良かったね、と小さく呟く。
「負けた…んスか…?」
誠凛の人達の喜んでいる声が聞こえる。姿が見える。それに対して、海常側の選手達は肩を落としている。
得点板を見ても、誠凛100の海常98と表示されていた。
色々なものが、自分が負けたのだと伝えてくる。
「生まれて初めて……」
負けた。
そう言葉にする前に、頬に涙が伝う。
生まれて初めて、試合で負けた。
こんなこと、初めてで。何故かは分からないが、次々に涙が溢れてくる。
「お、おい…黄瀬のヤツ泣いてね…?」
「マジかよ…たかが練習試合だぞ…?」
次から次に溢れてくる涙に自分自身戸惑いが隠せない。何故泣いているのか、自分自身にも分からない。
悲しい、というのとは違うような気がする。
「メソメソ泣いてんじゃねぇ!!!」
「ぐぇっ!?」
戸惑いが隠しきれない様子の黄瀬に、笠松が遠慮なく跳び蹴りを浴びせる。
まるで手加減が見えなかったその蹴りに、黄瀬は目を丸くして笠松を見上げた。
「大体、今まで負けたことないってんのがふざけてんだよ……いいか!お前のその脳みそに、リベンジって付け加えとけ!!」
「!」
笠松の言葉に息を飲む。
リベンジ。そんなこと、考えたこともなかった。
昔からどんな運動もそつなくこなせて、出来ない、負ける、という経験をしてこなかった。だからこそリベンジなんて考えたことがなかった。でも、今は。
「分かったか!!」
「はいっス!!」
次こそは、勝つ。勝ちたいと思った。笠松達と一緒に。
だから自分は、強くなりたい。もう負けないために。
生まれて初めて感じる思いに少し戸惑いもあるけれど。でも、どこかスッキリとした思いも感じている黄瀬だった。