カラフルラプソディ
□逆襲よろしく!
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「うわー…さすがはスポーツに力を入れてる学校…デカイなー…」
「そして超キレイだなー」
とある日曜日。
誠凛高校男子バスケットボール部一同プラス結衣は、神奈川にある海常高校の敷地内を歩いていた。あまりに大きくそして綺麗な校舎や敷地に、辺りをキョロキョロとしてしまうのは仕方ない。
誠凛も新設校のため綺麗ではあるが、それよりもデカイ。そして広い。
「……」
「大丈夫ですか火神君?いつにも増して目つき悪いです」
「…興奮して眠れなかったんだよ」
「遠足前の小学生みたいですね」
「テメェ……」
目の下にハッキリとした隈をつけている火神は、どうやら寝不足のようで。
念願のキセキの世代との試合に、興奮冷めやらぬ様子だ。
「そんなに図体デカくてもまだまだガキねー」
呆れたように笑うリコに、火神は何も言い返せず。小金井達も火神の様子に笑顔を浮かべていた。
しかしその中で1人だけ、冷めた表情を浮かべているのは結衣で。キセキの世代をぶっ倒す、と宣言した彼が…いや、彼らがどこまで通用するのか。全く歯が立たないのか、それとも少しは噛み付くのか。
『……』
「一緒に来て良かったわね、結衣ちゃん。これ1人で来てたら迷ってたかもよ」
『はい…ありがとうございます、気にかけてくださって』
昨夜、黒子から結衣宛てにメールが届いて。何事かと思いながら開くと、内容はリコからの伝言。
「明日一緒に行くわよ!」と、カントクが言ってました。
という非常に簡潔なメール届いて、特にわざわざ断る理由も無かった結衣は、好意に甘えてバスケ部員達と一緒に海常高校まで来た。
『広いなぁ…』
「土曜日なのに学生多いんだな」
「確かに…活動的な部活が多いのね」
「誠凛のみなさーーん!」
「ん?」
正面からこちらに走って来るのは黄瀬で。黄色い髪は遠くから見てもよく目立つ。
すれ違う女子生徒達が頬を赤らめて黄瀬を振り返ってキャーキャー騒いでいるが、当の本人は全く気にしていないかのように真っ直ぐ黒子達の所へ駆け寄ってきた。
「広いんでお迎えに上がりました」
「わざわざどーも」
「はっ!!!!」
『げっ……』
黄瀬と結衣の視線がかち合う。目が合ったその瞬間、結衣は次に黄瀬が起こしてくる行動が何となく読めた。黒子も読めた。
煌めいた黄瀬の眼差しが、大いに物語っている。
「結衣っちぃいいいーーッ!」
『んぎゅ!』
黄瀬はまわりに何人ものギャラリーがいることなど何も気にすることなく、そして遠慮することなく結衣に思いきり抱きついた。
2人には体格差があるため、結衣はすっぽりと包まれてしまう。黄瀬からすれば「抱き着きやすいベストサイズ!」と言うことらしいのだが、結衣は全くそんな風には思っていない。
まわりの生徒達(主に女子生徒)のざわめきが凄い。誠凛一同は、数日前にも見たこの光景に遠い目をしていた。
「ちゃんと来てくれたんスね〜!」
『約束したじゃない……で、涼ちゃんそろそろ離れて』
「えー!まだ足りないっス」
『周りの視線が痛いから!涼ちゃんファンと思わしき女の子達からの視線が痛いから!』
そう言うと、黄瀬は渋々(日向達には超嫌そうに見えた)結衣を解放した。
しかし、腕の中から解放したというだけであってぴったりと結衣の隣に立っている。この位置は譲らないつもりらしい。
「あ、黒子っち!どもー」
「どうも」
「あの日あっさり俺の誘い断るから、俺あれから毎晩枕濡らしてるんスよー」
「おい黄瀬、早く案内しろや」
「……だから」
黄瀬の瞳が鋭く細められ、その瞳のまま火神に向き直る。
火神も負けじと黄瀬を睨み返した。2人の間に、見えない火花がバチバチと弾けているように見えたのは、きっと結衣だけではないはずだ。
「黒子っちにそこまで言わせる君には少し興味があるんス。どれだけのものか知らないっスけど…本気でぶっ潰させてもらうっスよ」
「…はっ、上等だ!」
「楽しみにしてるっスよ?さ、体育館はこっちっス!ついて来てください!」
『うわぁッ!?』
ガッチリと結衣の手を握った黄瀬は、そのまま体育館に向かって歩き出す。
少し遠くで女子の悲鳴のようなものが聞こえたような気がするのは、多分気のせいではない。
「…端から見たらカップルだよな」
「どっからどう見ても恋人同士だろ」
「そうですか?毎日あんな感じでしたけど……」
「……やっぱり黄瀬が不憫だ」
黄瀬と結衣の後ろ姿を見て、やはりそう思う誠凛一同だった。