novel

□天使舞い降りて
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「……というわけで、リボーンも参加してもいいかな?」

 次の日早速4人に相談を持ちかけたら、快く承諾してくれた。

「ごめんね、ありがとう」
「そんなことないよ。私もリボーンくんと遊びたかったもん」
「そうですよ、リボーンちゃんも誘おうと思っていましたから」

 ね、と笑いあう二人を見て少し落ち込んだのも仕方ないだろう。










 家に帰ってリボーンに伝えるとそうか、とだけ返事を返してどこかに消えて行った。
 何だか昨日、正確にはあの後からリボーンが冷たい。声をかけるとリアクションは何かしらあるが、単調なのだ。

「オレ何かしたかなぁ」

 自室のベッドの縁に腰を掛け、夕闇の中明かりも点けずにポツリとつぶやいた。
 思い当たる事と言えば、やはりクリスマスの誘いしかない。そういえば、やたら二人で、という事を強調していた……ような気がする。

「もしかして、リボーンを傷つけた?」

 恋人たちの聖夜、クリスマス。それは色恋沙汰に疎いツナでも聞いたことがあるフレーズである。

「そ、そうだよな。オレ達一応付き合って……」

 そこまで言って顔を真っ赤に染めたツナは手で覆い隠し一人もんどりうつ。
 ツナとリボーンはつい数か月前、ツナの誕生日から付き合い始めた初々しいカップルである。
 しかしそれは周囲に告白していない。タイミングを外した、と言うのもあるが、ただ単純に恥ずかしいのだ。

「おい、ツナ。ママンが夕飯出来たって呼んでるぞ」

 ドアの所には件のリボーンがいた。いつの間に入ったんだ、と思ったがリボーンだから何でもありか、と一人納得する。
(そんなことより、だ!)
 謝るチャンスは今だ、と引き留めるも見事に無視をして「先に行ってるからな」と階下へと降りて行った。
 伸ばした手だけが空しく宙に留まっている。  今日は21日の金曜日。約束の25日までに仲直りできるかと聞かれたら間違いなく首を振ることが出来る。縦ではなく横にだが。

「今回はオレが悪いんだもんな、ちゃんと謝ろう」






「って、決意したはずなんだけどなぁ」

 気づけば当日。約束の時間まであと少し。どうやらリボーンは先に向かったようだ。
 普段は持ち歩かない少し大きめのトートバッグにクリスマスプレゼントを詰め込む。
 ハルが「クリスマスと言えばプレゼントですよね! だからみんなでプレゼント交換しませんか?」と提案したのだ。
 人数も少ないし、一人に付きひとつ用意することになったのだが、財布は残念ながらレシートしか出てこない。
 使わなかったお年玉を机の引き出しから抜き出して、1000円札を数枚捻じ込む。

「さてと、そろそろ行こうかな」

 行ってきます、と奈々に声をかけ、外に出る。
 珍しく沢山の人が往来していた。よくよく見れば幸せそうに笑いあう恋人たちばかり。
 ……寒い。
 マフラーに顔を埋めて待ち合わせ場所へと急ぐ。

 時計台に着くと既にツナ以外のメンバーは集まっていた。小走りで駆けよる。

「よ、ツナ」
「十代目!」
「ツナ君」
「あ、ツナさーん!」

 走るツナに気が付いた四人は各々声を上げて手を振る。

「ご、ごめんね。オレが最後だよね!!」

 大きく息を吸って呼吸を整える。
 いや、それが。と頬を掻きながら苦笑いを溢す山本に、へ? と素っ頓狂な顔を向けた。

「まだ小僧が来てねぇんだよ」
「そうなんですよ! てっきりツナさんと一緒だと思っていたんですが……」

 心配です、と京子と顔を見合わせたハル。
 いつもこういう行事ごとには進んでかき乱していくリボーンは、必ず一番先に来て、最後に来たツナをいたぶるのが定例だった。

「探しに行きますか、十代目」

 つい、と視線を会場となっているメインの広場にやる。
 この公園は上から見ると正方形の形をしていて、中央に芝生の広場が、そしてそれをぐるりと囲うように道があり、出店が出ている。
 そして、外の通りと公園の境界線で木が植えられており園内の様子はあまり窺えない。
 待ち合わせとなった時計台は入り口から少し入った所の木の近くにベンチとともに設置されている。

「うーん……でもこの人ごみの中からリボーンを探せるかなぁ。もしすれ違ったら困るし……」

 だから待ち合わせ場所を離れるわけにはいかない。しかもカップルや家族連れで賑わうこの人ごみの中から、たった一人を探すのは至難の技だろう。

「ちゃおっす」

 では、と口を開きかけた獄寺は、リボーンの登場にとって遮られてしまった。ぽかんと口を開いたまま、そのまま静止した獄寺を笑う山本。

「リボーンちゃん、どうしたんですか!? 何かあったんですか!?」
「ああ。ちょっと用事があったんだ」

 そうだったんですか、とほっと胸を撫でおろすハルと京子。

「それじゃ、チームを分けるぞ」
「はひ? 何のですか?」
「普通に楽しむだけじゃつまんねぇだろ? だから、スタンプラリーをしようと思ってもらってきたんだぞ」

 真っ黒いトレンチコートのポケットから紙を数枚取り出して見せる。そこには問題が5問書かれていて、その個所に行くと係りの者からスタンプが貰えるというものだった。

「なんで、スタンプラリーなんだよっ! もっと普通に楽しもうよ!!」

 勿論ツナの発言は見事にスル―されて、話は先に進む。

「全部問題は違うからな。他のグループに付いて行ってもスタンプはくれねえから気を付けろよ」

 紙の右下に記載されていた「冬のまつり運営委員会」という字を目ざとく見つけた獄寺。

「リボーンさんが作ったんじゃないんですね」
「今回はオレも楽しもうと思ってな。オレだけ答えを知っているのもフェアじゃねぇだろ」
「いや、だから! 普通に楽しもうってば」

 キラキラとした瞳でリボーンを見やる京子とハルはやる気満々で、一緒にできたらいいね、なんて笑い合っている。
 獄寺は「十代目の右腕として精一杯頑張らせていただきます」なんてもうツナと組んでいるのは決定事項だし、山本は「一緒に組もうぜツナ」とこちらも組む気でいる。
 くじ引きの箱を何処からか出して、引くように促す。

「って、どっから出したんだよ、そんな大きいの!」
「今回は細工は一切してないからな」
「やっぱり今までのは細工してたのか!!」
「さ、京子、ハルから順に引いて行け」

 箱に中に手を伸ばし、二つ折りにされた紙を取り出した。
 ふたりが引いて、ツナ、獄寺、山本、リボーンの順に引いて、開いた。

「京子から言っていけ」
「うん、えっとね、1番だったよ!」

 その言葉にドキリとするツナ。心なしか頬はだらしなく緩んでいる。

「ハルは3番でした」
「違うペアだったね」
「はい、残念です……」
「次はツナ、いけ」

 今日初めて名前を呼ばれたツナは大げさに肩を揺らして反応する。

「どうしたんですか、十代目」
「寒くて振るえたのか?」
「いや、ちがうよ。なんでもない」

 あはは、と曖昧に笑って見せてカサリと開く。

「オレは……2番だったよ」
「そうか、じゃあ山本と獄寺は中を見てそのペアの所に行け」

 そう言われて恐る恐る中を覗くと、

「げっ、俺アホ女とかよ」
「アホってなんですか!」

 ハル、獄寺ペアと

「お、笹川とか。宜しくな」
「あ、山本君。こっちこそよろしくね」

 天然ペアが結成された。

「えっと、よろしくね。リボーン」

 気まずいペアになってしまった、と内心ため息を吐いてしまう。
 恐々としながら声をかけると短く返事が返されて、微かに安堵した。

「終わったペアからここに集合だぞ。因みに最下位のペアが1位のペアに奢るんだからな」

 紙と地図が配られて開始となった。





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