novel
□さぁ、勝ち目の無い勝負をしましょう
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「綱吉、ちょっと良いかい」
何ともタイミング悪く入ってきた雲雀はその瞬間をばっちりと見てしまい、フリーズしてしまった。微動だにしない雲雀。
その状況が漸く呑み込めた時、無意識にトンファーを取り出してリボーンに殺気を放っていた。
しかし流石は最強のヒットマンである。痛いほどの殺気をどこ吹く風で受け流し、行為をエスカレートさせていく。
角度を変えて何度も何度もキスを送り、段々と息が上がっていくツナ。
「いい加減にしなよ、赤ん坊……」
「リボーンさん、そのくらいで」
そろそろ我慢の限界だったのだろう。
獄寺まで拳を震わせて目の前に広がるピンクの世界にストップをかけた。勿論、両手で抱えていた書類は重力に従い、床に斑を作っている。
「だってよ、ツナ。どうする?」
「や。もっと」
まだ足りない、と強請るツナに米神が震える。
「いい加減にしなよ、綱吉」
ぺり、と無理やりリボーンから引っぺがされたツナはやだやだ、と駄々をこねる。
床に立たせて、ツナの方へひらりと一枚紙を放り投げた。
「なんですか、これ」
珍しく、呆れ顔でツナを見やる。
「この間きみに頼まれていたコルヴォの件だよ」
そいえば、確か数日前に「コルヴォファミリーと深い関係にあるファミリーの調査」を頼んだ気がする。
ああ、と納得顔をしてそれにざっと目を通した。
「ご苦労様でした、雲雀さん」
用が済んだのならとっとと帰れという声色で礼を告げる。
しかし唯我独尊な雲雀は素面通りに言葉を受け取り、その場に居座った。
「とっとと帰れよ雲雀」
リボーンが鬱陶しげに一瞥をくれるも、壁に体重を預けてじぃっとツナたちを凝視する。
居心地の悪さにただただ乾いた笑みを浮かべた。
「ツナ、こっちに戻ってこい」
手招きをしつつ呼び寄せると一瞬にして表情を緩めた。
「リボーン!!」
がばっと抱きつくと子犬のように甘える。
それにムッとしたのは残りの三人だ。
面白くない、その感情を素直にリボーンにぶつける。勿論ツナが三人の方に目もくれていないから出来る事だ。
以前に一度、三人が三人とも失態を犯し、ツナに一週間以上口を利いてもらえなかったことがあった。
毎日毎日屋敷からは謝る声(主に獄寺と山本)と高級菓子の貢物(言わずもがな雲雀)等でツナに許してもらおうとするも悉く失敗。
挙句の果てにはリボーンが「ざまぁ見ろ」とでも言った風にこれでもかとツナとスキンシップを取っていのだ。獄寺達にしたら、拷問以外のなにものでもない。
あの雲雀でさえ、目に見えるほどの落ち込み具合だったらしい。それを見かねた草壁がどうにかツナを宥めてその時は事なきを得たのだ。
それ以降、守護者たちは心に決めた。「リボーンに嫉妬する時はツナに悟られないようにする」と。
「リボーン、だいすき!」
「ああ、オレもだぞ。愛しい愛しいオレのツナ」
そこでふっと顔を上げたリボーンは鼻で笑い、勝者の余裕を見せつけた。
(このオレですら、ここまで来るのに十年かかったんだ。そう易々と渡せるわけねぇだろ)
「リボーン? どうしたの?」
「何でもないぞ」
小首を傾げて上目遣いでリボーンを見やるツナ。それに対してふわりと優しく微笑んだリボーンに守護者は悪寒を覚えた。
甘ったるい世界の中にいる二人に唇を強く噛みしめる守護者陣。そこにいるのは自分の筈だったのに、と激情にかられる。
しかし自分に対する好意にはどこまでも鈍感なツナがそれに気づくことが有る筈もなくて。
「リボーン」
「ツナ」
するりと互いの頬に手を這わせ、見つめ合う事数秒。その雰囲気に固まる守護者。
そんな彼らを綺麗さっぱり忘れ去っているツナ。
そして二人はとろけるような深いキスを交わした。
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