novel

□Happy Halloween
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「ツナ。Trick or Treatだぞ」

 黒猫の着ぐるみを身に着けたリボーンが意気揚々と部屋に入った。歩くたびに首に付いている鈴がちりんと涼しげな音が鳴る。

(ツナが菓子を用意なんてしているはずがねぇ。これを機にあんなことやこんなことを……)

 くくく、と喉で笑ったリボーンにびくりと肩を震わすツナ。
ゲームのコントローラーが手から滑り落ちた。

「はら、お菓子をくれないとイタズラするぞ?」

 口角を吊り上げ、楽しげに菓子を要求する。ツナは顔面蒼白だった。

「持ってるわけねぇよな?」

 じりじりと距離を詰める。
 不意にツナがスッとその場を立ち、部屋を後にした。

「ツナ?」

 どうしたのだろうか、超直感が逃げろと警告を鳴らしたのだろうか。
 階下からツナと奈々の話し声が聞こえてくる。

(ほう。オレを無視するたぁいい度胸じゃねぇか、ツナ)

 ぴくりと米神を震わして、何とも言い難い表情を浮かべた。
 ツナの後を追おうと踵を返したが、トントンと階段を上がってくる音が聞こえ大人しく待つことにする。

「ごめんね」

 お盆に乗せて持って来たのはオレンジ色をした菓子の数々。それとマグカップが置かれていた。

「それは?」
「へ? お菓子だけど」

 しれっと言い放ったツナに心の中で絶望感に打ちひしがれる。

(まさか、用意してるとはな。想像してなかったぞ)

 こういうイベントには疎いツナだ。ハロウィンなんて、日本の家庭にはあまり浸透していないことをツナが覚えているとは全く考えていなかった。

「オレはイタズラがしたかったぞ……」

 ぼそりと溢した言葉に青ざめる。寂しげにちりんと鈴が鳴った。

「な、何をするつもりだったの!?」

 ひぃっと情けない声を出し怯える。

「まぁいい。で、何を持って来たんだ?」

 部屋の中央に置いてある小さなテーブルにお盆を置き、ちょこんと座った。
 そのツナの膝にこれまたちょこんと座る。

「かぼちゃのプリンに、チョコとかぼちゃのクッキーでしょ、お化けの形をしたスィートポテトに……」

 指を折り、説明をする。可愛らしいお菓子が文字通り山盛りになっていた。

「これ、ママンが作ったんだろう。すげえな」

 そのあまりの量に目を見開く。

「え……っと」

 頬を掻き、なぜか照れるツナに可愛いなとだらしなく表情を緩める。

「実は、オレが作ったんだ」
「は? 嘘だろ?」

 むっとして抗議するツナ。だが、信じられないのだ。
 まともに包丁も握れないあのツナが!

「失礼だな。これでも毎年ハロウィンには作ってるんだぞ」

 奈々がこういうファンシーな行事が好きで、昔からこの時期になると一緒に菓子を作っていたそうだ。
 それがいつしか菓子を作るのはツナの担当になっていったらしい。

「見た目はなかなかだな」

 流石奈々から習っていただけある。見た目はかなりの物だ。

「肝心なのは味だぞ」
「あははは……」

 苦い笑みでそれに答え、食べるように促す。
しかしなかなか菓子に手を付けない。

「どうしたんだ? あ、もしかして嫌いなもんでもあった!?」

 わたわたと手を上下させ慌てふためく。

「違ぇぞ」

 なら何だ、と首を傾げるツナに、くすと笑う。

「食わせろ」
「はぁ!? なんでそんな恥ずかしいことしなくちゃいけないんだよ!?」
「イタズラが出来なかったからだぞ」

 あーんと口を開き、雛鳥のように餌を待つ。
右に左にと忙しなく視線を動かし、あーとかうーとか言葉にならない声を漏らす。

「しょうがないなぁ……」

 スプーンを手に取り、プリンをすくう。

「はい」

 あーんと言うのは恥ずかしい。どうやらリボーンもそこまで期待はしていなかったらしく咎められることはなかった。
 まぐまぐと口を動かし咀嚼するリボーンを不安げな顔で見る。

「うまいぞ」

 奈々に教わっただけあって、味が似ている。これでまともに料理が出来ないのが不思議だ。

「えへへ」

 嬉しそうに顔を赤らめ照れる。

(可愛いじゃねぇか。今日の所はこの美味い菓子とツナに免じてイタズラは勘弁してやる)

「バレンタインも期待してるからな」

 引き攣ったツナの顔は見ものだった。









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 ちょっと遅刻しましたが、ハロウィンネタでした。如何でしたでしょうか?
 ハロウィンのイタズラ、というとどうしても裏に行きそうになるのをどうにかしてほのぼのにしてみました。で、出来たのがありきたりな話に……。
 本当はハロウィンの由来や意味についてのネタで書きたかったのですが時間が無くて(泣)
 多分ママンはこういう行事好きだと思うんだ。で、ツナと一緒に毎年何かをやってたと思う。という妄想でした。
 それでは読んで下さりありがとうございました。






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