novel

□オータムグローリーより、愛を込めて
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「十代目が思っている方は……オレ、ではないんですよ、ね」

 手の中には先程渡されたバングルがきつく握りしめられていた。

「え……?」
「十代目の中でオレは何番目ですか?」
「……?」
「今からオレが言う事は独り言だとでも思ってください」

 未だ獄寺の言っていることが理解できていないツナ。

「オレは十代目の事が好きなんです。誰よりも強く、誰よりも優しい、そんな貴方が大好きだったんです」
 
 驚愕に目を見開く。それに苦笑いで返し、言葉を続けた。

「この気持ちに気づいたのは、貴方が迷子の子供に歌を歌っていた時です。とても優しく微笑まれていて、それに目を奪われました」
 
 そんなことあったな、と思い出す。

「貴方はオレの光です。あなたのお陰で今オレはここにいるのです」

一呼吸置いてから次の言葉を発した。

「オレはツナさんが好きなんです」

 困惑し、瞳が揺れる。

「すみません、本当は言うつもりなんてなかったんです。貴方に迷惑をかけたくなかった」

 いや、違うなと自嘲の笑みを浮かべた。

「ただ、この関係が消えてしまうことが怖かったんです」
「でも、今日話を聞いて抑えていた気持ちがあふれてしまった」
「獄寺、くん」

 漸くツナが言葉にできたのは獄寺の名を呼ぶことだった。

「答えは分かっています。でも、貴方がオレの最愛の人という事に変わりは無い」
「……うん、ありがとう」

 自分の都合しか考えずに獄寺に相談をした己に腹が立った。純粋な獄寺くんの気持ちを踏みにじってしまった、傷つけてしまった。
 いくら謝っても足りないだろう。しかし謝ったところで獄寺にとっては何の意味も持たない。だから、嬉しかったことと、ごめんなさいを込めて礼を言ったのだ。

「十代目が気に病むことはありませんよ。これはオレの自己満足なんですから」

 長年の付き合いで言葉の裏まで正確に読み取った獄寺。

「今日はこれで失礼しますね」

 スッと立ちあがりリビングのドアノブに手をかける。あ、と振り返った。

「明後日は昼から仕事があるので10時にお迎えに上がりますね」

 それはつまり今まで通りの関係でいようという事。なかったことにしてくれと言う無言の合図。無理して笑う獄寺が見ていて痛々しい。

「待って、獄寺くん」

 慌てて獄寺の後を追う。ここで引き留めなければ今後もずっとぎくしゃくした関係が続くのだろう。自分勝手な行動だと分かっていても、それは嫌だったのだ。
 ぴたりと、時が止まってしまったかのように動きを制止した獄寺。呼吸さえ止まっているのではないのだろうか。

「な、何でしょう十代目」

声をかけるとピクリと肩が跳ねた。

「あのね、獄寺くんの気持ち嬉しかったよ。だって、こんな風に素直に気持ちを伝えてくれたの君が初めてだったんだ。君はオレが光だって言ったけど、オレにしてみれば君が光だった。変わるきっかけをくれたのは君だったんだ」

 素直な思いを口に出す。言葉というものは何ともどかしいのだろう。
 十代目、と獄寺がぽつりと呟いた。

「オレにとって君は好きとか嫌いとか言う前に恩人なんだ。優劣何て付けれない存在なんだよ」

 目に涙をためてツナを見やる。

「獄寺くんの事が大切なんだ」

 堰を切ったように溢れ出す涙。

「だから君の気持ちは嬉しかったし、出来る事ならば答えてあげたかった」
「十代目……」
「でも、獄寺くんは同情なんかで付き合ってほしくは無いと思う。だから、ごめん。ありがとう」
「十代目っ!!!」

 今だけはすみませんと、ぎゅっと抱き着いてくる。長年の感情が滴となって流れていくがそれに答えることは出来ない。
 してはならないのだ。自分はなんて傲慢で浅はかで醜いのだろう。心の中で何度も謝った。君を傷つけてごめん、と。
 
「大好きです、愛していました……っ!!」

自分が幸せになろうと思えばその裏で誰かが傷ついてしまう。
 恋とはなんて悲しい物なのだろう。










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 何だか最後のあたりのやり取りが気に喰わないです。そのうち書き直すかも?


 告白されても、答えられない。でも、友達ではいてほしい。そう思ってしまいますよね? 
 我がままだけど、しょうがない。だって諦めきれないから。そう簡単に諦められるようなものであればそれは本気ではないのだと思う。

 この話ではツナは獄寺に対し、友愛という感情で接していました。獄寺は言わずもがな、です。相手を思う、思いの深さは同じでも、ベクトルが違っただけ。
 だから抱き着かれても、腕は回していないと思います。だって、答えられないから。

 あ、最初に書いていたころは獄寺はツナに告白する予定は全くなかったんです。遠くから見守るキャラの予定だったのです。
しかし、ランチのシーンから雲行きが怪しくなり、ついに言っちゃったよってことで、私がかなり驚いています。
 振って、でも、友達でいてくださいねって話は何分書いたことが無いので、グダグダ感満載ですが、雰囲気で読んでいただければ幸いです。

 因みにBGMは岡崎律子さんの「愛してほしくて」と「最愛」です。何気なくかけたCDがあまりにも獄寺の気持ちにぴったりだったのでエンドレスで聴いていました。ぜひ一度聴いてみてください!




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