novel
□Sugar!
2ページ/3ページ
商店街は主婦や友達連れで賑わっていた。よく商店街の活性化を、と叫ばれているが、どうやらその言葉とは縁がなさそうである。
雑貨屋の前を通りすぎようとした時、丁度中から出て来た京子とハルに出会った。
「あ、ツナくん」
「はひっ!! ツナさん偶然です!! 何をやっているんですか?」
「リボーンの誕生日プレゼント買いに来たんだ。京子ちゃん達も?」
二人の手には紙袋が握られていた。
「そうなの。ちょうど買って終わったところなんだ」
「それで、この後お茶しませんかって話になったんです」
「よかったらツナくんもどう?」
その申し出はとても魅力的だ。しかし、まだ用事が終わっていない。どんなものを買うかという明確な考えもない今、その話に乗るわけにはいかなかった。
「有り難う、でもごめん。まだプレゼント決まってないから……」
「そうですか……。残念です」
「あ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「うん? どうしたの?」
「二人はどんなもの買ったの?」
参考までに聞いてみることにした。二人が毎年あげているプレゼントはリボーンに喜ばれているのだ。
「これだよ」
かさりと袋から取り出したのは長方形の箱に入ったもの。黒のフレームのシンプルな作りになっている写真立て。リボーンのイメージにピッタリだ。
「写真を入れて渡そうと思ったんだ」
その為にラッピングはしてもらわなかったのだろう。
「そっか、リボーンもきっと喜んでくれると思うよ」
嬉しそうに笑う京子につられて笑う。
「ハルはこれです!!」
じゃーん、と掛け声を着けて見せてくれたのは入浴剤のセット。楕円形の木で編まれたカゴに入っているそれはとてもお洒落である。
「これ、ハルのお気に入りなんですよ!!」
ミルクにバラにレモンといったファンシーな物から、発汗作用のある物まで多岐にわたる。
「1日の終わりにゆっくりしてもらえたら、と思って選んだんです!」
「色んな種類の入浴剤があるんだね」
よくCMで流れている薬用の入浴剤しか知らない為こんなにも沢山の種類があるとは知らなかった。
「ツナさんはどんなものを買うんですか?」
「そ、それがまだ決まってなくて……」
苦笑いを溢しながら頬をかく。大丈夫だよ、と京子が声をかけた。
「リボーンくんはツナくんがあげるものなら何でも嬉しいと思うな」
「そうですよ!! 毎年、すごく嬉しそうにしてました!!」
その言葉を聞いて、何だか照れ臭くなり目線をさ迷わせる。
「そうかな、そうならいいなぁ」
ポツリと小さく呟いた言葉は幸せに溢れている。
「それじゃあ、邪魔しちゃ駄目だね」
「そうですね。良いものが見つかるように、ハル、祈ってます!!」
「頑張ってね。明日、また学校で」
手を振り、二人と別れたツナは再びうろうろと歩く。
偶々、とある店の前を通った時のことだ。ウィンドウに展示されていた物に興味を引かれたのは。
(これなら、良いかもしれない)
そして吸い込まれるように店内に入っていった。
暫くしてから店から出て来たツナは満足げな表情を浮かべている。
「気に入ってくれるといいなぁ」
そんなことをひとり呟き帰路に着いた。
.