novel

□音ゲー
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 そんなこんなで放課後。所は変わってゲーセンの一角。
 音ゲーがあるコーナーは至る所から音楽が大音量で流れているため煩い。

「なんだここ……」

 耳のいい獄寺は勘弁してくれとでも言わんばかりにげっそりとしていた。

「大丈夫? ダメそうなら向こうの休憩所にいてもいいよ?」

 音ゲーのある場所からは離れているため、騒音もマシだろうと思い勧めるツナ。

「だだだ、大丈夫です!」
 自分から着いて来ていてそんなことをしては情けないというか面目ないと言うか。ツナはそんなことを気にしないだろうが、やはり弱音を吐くわけにはいかなかった。

「そう? きつくなったら言ってね?」
「ありがとうございます!!!」

 そういや、と山本。
「ツナは音ゲー歴どのくらいなんだ?」

 考え込むツナ。

「2年くらいかな。それより山本、やんないの?」「先に師匠の技を見せてくれよ」

 師匠ってなんだ、と心の中で突っ込むツナに対していつもと同じ笑みを浮かべる山本。

「久しぶりだからどのくらい出来るかわかんないけど、それでもいいなら」

いかんせんリボーンが来てからと言うもの、こうして外に出て遊ぶ暇がなかなかなかったのだ。
 財布からグレーのカードと100円玉を取り出す。ガードは読み取り部分に翳して財布にしまった。
 ぴろんと通信成功の音がしてからコインを入れる。読み取りに失敗した時のためにこのような順番でいつもプレイしている。
 ユーザー名「ツナマヨ」と言う名前とクリア数が画面に表示された。

「ツナすげえやり込んでんだな……」
「流石っす、十代目!!」

 オレはどちらかというとスコアラーよりもクリアラーなのだ。

「あはは、そんなことないって。オレよりすごい人だっているんだから」
 9ボタン、ノーマルモードを選択し、曲を選ぶ。ここで難易度をノーマルからエクストラに変更。難易度の順としてノーマル,ハイパー、エクストラとなっている。

「なににしようかなぁ」
 制限時間があるので悠長にできないのだが。マイベストを見ながら決める。

「うん。これにしよう。山本、一曲目で失敗しても次のステージには行けるから、自分がなかなかクリアできないものを選ぶといいよ」

 アドバイスをするのも忘れない。ちなみに選んだ曲は「音楽」というもの。黄色のボタンを同時押しして速さを変更する。

「速さを変えると落ちてくるのが見やすくなってタイミングもわかりやすくなるからね



『アーユーレディ?』
 クラシックのような音楽が流れだすと同時にカラフルなものが大量に落ちてくる。いつも思うのだが、どこがジャンル名「サイレント」なのだろうか。やっている側は全く静かじゃないぞ。

「ツナ、すげえのな……」

 普段のおっとりからは考えられないような手の動きで捌いている。ふと顔を見ると超モードの時のように目を細め真剣そのものだ。

「十代目、渋いっすっ!」

 褒め続ける獄寺に、開いた口が塞がらない山本がそこにいた。

「煩い」

 よほど外野(と書いて獄寺と読む)が煩かったのか一蹴するツナ。口調まで超モードになっている。

 曲は中盤に差し掛かっていた。先程の嵐のような怒涛の攻撃に比べれば幾分かマシだが、自分には到底できない芸当であることは変わらない。
 後半に入り、階段プラス同時押し。今のところノーバッドだ。凄いとしか言いようがない。しかしここで初めていくつかミスをした。小さく舌打ちをするツナ。それでも持ち直し、ラストに差し掛かる。

 今までの比でないほどの同時押しも難なくクリアし、フィーバーで曲が終了。

「ふぃー」

 こんなものかな、と呟きながら手を揉むツナ。

「って、あれ?」

 いつの間にかツナの周りにはギャラリーが沢山。獄寺は先程の煩いの一言で落ちたのだろう、すみませんとひたすら叫びながらの土下座、山本は未だに信じられないのか目をまん丸にしている。
(か、カオスだ……)

画面が変わりスコアが表示される。

「ん〜、バッドが20か。久々だしこんなもんかな」

 その一言でやっと正気に戻った山本。

「いや、今のでミスが20しかないってすごいと思うぜ?」
「そうですよ10代目!! オレには何が落ちてきているのか全く分かりませんでした」
「てか、これで満足してないって、いつもはどのくらいなんだ?」
「え? バッドの数? ……パーフェクト!! て言いたいけど実際は良くてノーバッド、不調の時は10以下かな」

 観客と山本の心が一つになった。

 (化け物かよ……)

 獄寺はひたすらに褒めまくり、照れるツナ。しっぽが見える忠犬であった。
 画面が曲のセレクトに移る。

「ああ、山本。またアドバイスね。2曲目は失敗しても次の曲には行けないから、確実に繋げることが出来るものにしたらいいよ」

 選んだ曲は「この子の七つのお祝いに」だ。
 さっきと同じように速さを変更する。



『アーユーレディ?』
 右のキャラクターは壊れた人形のようでちょっと怖い。曲も名前からしておどろおどろしいが……。
 怪しげなイントロが始まった。
「音楽」よりレベルを落としたのだろう、落ちてくる数が少なくなっている。
 それでも同時押しの階段の嵐に、リズムが取りづらい曲なのだ。難しいことに変わりは無い。

 ポッ○ンの順番待ちをしている者たちは騒がないが初めて見たものたちは騒ぎ、ツナの逆鱗に触れぬように獄寺がさりげなく脅していた。
 曲もラストスパートに入り、最後の一個を叩いた。画面に表示されたのはパーフェクトの文字。

「レベル下げたらパーフェクトか。うん、感覚も大分戻ってきてるかな」
「なあツナ。パーフェクトってどうやりゃあ出んだ?」
「ああ、説明してなかったね。パーフェクトがバッドとグッド、グレートが無くてパーフェクトばっかでクリアした時の事で、ノーバッドがそのままの意味でグッド、グレートはあるけどバッドはゼロってことなんだ」

 ポッ○ンの判断は下からバッド、グッド、グレート、クールになっている。勿論、クールに成る程シビアな判定が下されるのだが。

「じゃあ、今のはかなりすごいってことですよね!?」
「まあ、さっきよりはレベル下げたしね」

 えへへ、と笑うツナを見ているとプレイ中のあれは何なんだと言いたくなる。
 リザルト画面になり点数やコンボ数が表示された。赤のボタンを押して次のステージに進む。

「あ、ここ3曲設定なんだ。じゃあ、ラストはあれ行こうかな」

 迷わず選んだそれは「シュレーディンガーの猫」。わけのわからないもの、と評価される曲だ。ノーマルでもこの曲は慣れてきたから、と選び返り討ちにされる人が多いとかなんとか。要するに一見さんお断りなラスボス的曲である。
 今までより数段険しくなる表情。ポッパーは目を見開いている者多数。

(この曲ってそんなに難しいのか?)

 初心者の山本には良くわかっていないが、かなり凄いのだ。



『アーユーレディ?』

「行くぞ」

 その声ののちに始まる曲。初っ端から容赦なく落ちてくる落ちてくる。この曲は間違いなくクリアをさせないために作られた曲だ。尋常じゃない。
 ツナの手、むしろ指はすごい動きをしている。人間やめたんですか、と問いたくなるくらいに。可笑しいのだ、使い方が。見えない。
 ポッパーから上がる応援の声と歓声。獄寺が睨みを利かせるも全く動じず、ヒートアップするばかり。山本に至っては若干トリップしている始末である。
 とうとう問題のわけがわからないものと称される60〜61小節目に突入した。何色が落ちてきているのか認識が出来ない。いくつか落としたのだろう、その度に小さく舌打ちの声が聞こえる。

 後半は前半よりも比較的落ちてくる数が減ったと言え、やはり可笑しい程に降ってくる。
 そして曲も終わって結果が出た。

「はあ、やっぱあそこが意味不明なんだよな。何とかして克服したいけど目が追い付かなくなるんだよね」

 ブツブツとバッドの数を見ながら呟く。
ギャラリーからは神だとか人間じゃねえとか色々言われているがアウト・オブ・眼中なのだろう。

「ツ、ツナ。すげえを通り越してるのな。どうやりゃあんな動き出来るんだ?」
「十代目、流石です! あなたやはり神と崇められるに値するお方。この獄寺、あなた様に使えることが出来ることを大変うれしく思います……!」

 涙ながらにそう仰る獄寺に、呆れるツナ。いくらなんでも話が飛躍しすぎだ。
 赤いボタンを叩いていると、エクストラステージに進めた。

「なんだ、これ?」

 はてなを浮かべる山本に対してにこやかに説明を入れるツナ。

「条件を満たしたら進めるんだ。3曲の合計ポイントが、設定されたポイントを超えていたらこれになるってわけ。4曲設定だとまた設定ポイントも上がるからね。計算式は忘れちゃったけど」
「ああ、だから結果の画面で数字が出てたのか」
「そういうこと」

 さて、何をしようかなと今にも鼻歌を歌いそうなツナ。
 時間ぎりぎりまで迷った末に選んだのは「uen」という曲だった。
この曲のシュレーディンガーと並ぶ程の難しさである。どちらかと言うとこっちの方が少し簡単かな、と言うくらいだ。
 聴いた限りでは青色、というイメージの曲だ。静かな曲かと思ったが後半に熱くなる。ピアノの綺麗な曲だ。譜面は、最早何も言うまい。

「うん、まあまあかな」
 そうは言うがやはりバッドの数は少ない方だ。
 獄寺を見ると膝をついて本当に崇めていた。ここまで来ると怖い。彼の将来が不安になってくる。それの混じっているポッパーの皆さんもちらほらと。

(本当、何なんだこの空間。早く逃げたい……)
 総合の成績が出されて終わった。山本と獄寺を引いて一旦この場から去る。

「なんであんなにいっぱい人が寄ってきてたの!?」
「そりゃ、ツナがすげえからだろ?」
「じゃあなんで最後あんなことになっていたんだよ!!」
「獄寺がやりだしたら他の人もやりだしたのな。異様な光景だったな」
「済みません、十代目!! オレのせいでご迷惑をぉぉ!!!!」

 勢いよく額を床にぶつけながら土下座をする獄寺。

「も、もういいからさ。頭上げてよ」

 すまなそうな表情の獄寺。額には血のオプション付き。床にも数滴落ちていた。

「ひぃ! 獄寺くん、血が出てるよ!!!」

 鞄の中から絆創膏を出し、手当をするツナ。それを羨ましそうに見る山本と、感激して鼻血まで垂らす獄寺。

「ちょっ、どうしたの! 鼻ぶつけて血が出たの!?」

 とにかく、今日はこれ以上続行することは出来そうにない。教えるのはまた今度で良いかと山本に了承を貰い、ゲームセンターを後にした三人だった。




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終わりが見つからないので強制終了!!!
獄寺くんがぶっ壊れてしまった。最近嫌わればっかり読んでるから正反対の彼が出てきたのかな?
曲は私の好きなものです。実際にプレイできますよ! 
因みに私はそんなにポッ○ンできません。不器用なもんで、左右別のリズムが取れなくて(笑)
安定は28くらいなのでまだまだひよっこです。胸きゅんパレットとかロクブテは女の子って感じで大好き。さすがにツナには合わないので出しませんでしたが。二人の前ですると……さらに混沌としそう(笑)
何かおススメがあったらぜひぜひ教えてくださいね!


用語説明
クリアラー……難しい曲をクリアすることに楽しみを見出しているもの
スコアラー……点数を多く稼ぐことに楽しみを見出している者
ポッパー……ポッ○ンをプレイするものたちの総称




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