novel

□天使舞い降りて
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「ね、ツナ君。知ってる? クリスマスの伝説」

京子が放ったその一言が今回の騒動の発端だった。




「伝説?」

 冬の陽気のなか、屋上で弁当を突いていたツナは箸を唇にあてたまま首を傾げた。

「冬のまつりで飾られるツリーのことだけど」

 知らない? とこれまたツナと同じように首をかしげる京子。
 傍からみたらほのぼのカップルの様で微笑ましい。

「あ、ハル知ってますよ!」
「オレもお客さんから聞いたことあるのな」

 確か、と空中に視線をやり内容を思い出すハルと、顔を見合わせるツナと獄寺。
 その伝説をハルと京子が語り、それを聞いたツナは耳まで真っ赤にしてうつ向いてしまった。

「というわけで、行こうよツナ君!」
「えぇ! オレと京子ちゃんで!?」

 ぱっと顔を上げた先の京子はこれ以上ないと言うほどに満面の笑みを浮かべている。

「あ! ハルも行きたいです!」

 さっと挙手し主張をすると、それに便乗して獄寺と山本も行くと声を上げる。
 京子とハルは手を合わせて楽しそうに「何見ようか」とか「雪降ったら綺麗ですよね」と話していた。

「だ、だよね……」

 少し期待を持ってしまったツナはがっくりと肩を落とし落胆する。
 ちなみに守護者二人は言い争っていた。

「じゃあ、25日の6時に並盛中央公園の時計台の所でいいかな?」

 日程までこの短時間で話し合ったのだろう、京子が3人に声をかける。

「うん、大丈夫だよ」

 視界の端で二人が頷いたのを見て、ツナも慌てて返事を返した。











「ただいまー」
「あら、ツっくん。おかえりなさい」
「ツナ、お帰りだもんね」
「ツナさん、お帰りなさい」

 学校指定の鞄を肩にかけたままリビングに顔を出すと、既に小学校から帰っていたランボとイーピンがおやつを食べていた。
 くるりと部屋を見渡す。

「あれ、リボーンは?」

 呪いも解けて緩やかに成長を始めたリボーンは今年で5歳になった。しかし日本の5歳児とは比べ物にならないほど身長が高い。
 朝は学校まで付いてきて、そのまま校内に作ったアジトに向かったリボーン。だが、昼休みになっても、下校時刻になってもツナの前に現れなかったので先に帰ったと思い帰宅したのだが。

「え、ツっ君と一緒じゃなかったの?」

 目を大きく見開いて驚く様子から帰ってきていないことを悟ったツナは鞄を背負ったまま玄関に向かった。
 よろしくね、と奈々の声を背に。
 靴を履き、いざ外へとドアノブに手をかけようとした瞬間、がちゃりと重い音を立てて開いた。

「おいツナ、こんなところで何してんだ」
「ふぁ!! び、吃驚した……」

 ドキドキと煩い胸に手を当てて荒い息を繰り返す。
 その様を見てリボーンはにやりと笑って「そうか、オレを心配してたのか」と頷いた。

「いや、ちが! ……うことないけど……」

 語尾になるにつれ、萎んでいくツナの声にそうかそうか、と満足気に笑む。

「ああ、そうだ。25日、空けておけよ」
「へ?」

 きょとんとした顔を向けるツナに、さらに言葉を続ける。

「並盛中央公園のイルミネーション、二人で見に行くぞ」

 断ると黒光りする例のブツを向けられることは日を見るより確かなので二つ返事で了承しようとしたが。

「ごめん、リボーン。その日京子ちゃんたちと約束しちゃったんだ……」

 本当にごめん、と手を合わせて謝る。

「オレも行くぞ」

 てっきり脅されると思っていただけにその科白には心底驚愕した。

「勿論構わないよな?」

 にーっこり。
 5歳児には似合わない、ブリザードが吹き荒れるが如く冷たい笑みを浮かべたリボーンに、ただ壊れた機械のように頷くしかできなかった。







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