小説
□アイアイ傘(闇アイアイ)
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「ここはどこ?」
確か、今ぼくは寝ようとベットに横になったはずだった。だけども、今ぼくがいるのは何もない、ただ真っ暗なだけの空間にいた。
「夢…かな?」
「ある意味あってるね。」
急にどこからか声が聞こえた。
「誰!?」
あたりを見回してみたが誰もいなく、ぼくの声だけが響いているだけだった。
「こっちだよ。」
再び声が聞こえ、急いで声がしたほうへと顔を向けた。
「……え?!」
声の主を見た瞬間に、ぼくは声が出なくなってしまった。
「どうしたの?気弱なぼく。」
そう……声の主は妖艶な笑みを浮かべていり僕だった。
「何を驚いてるいるの?」
「だ、だって…なんでぼくがもう一人??」
「ふふっ…ここは君…いや僕の精神世界だからの。」
「?」
もう一人の僕が何を言っているのかがわからずに、ただただほうけることしか出来なかった。
「簡単に言えば意識がある夢。だから最初言っていたのはほとんど合ってたんだね。」
「………。」
確かに夢と言われて似た感覚を感じたけど、もっと今の感覚に近いのをぼくは思い出した。
「PSYクオリア…。」
ぼくがこの力に呑まれて、周りのみんなに迷惑をかけてしまっていた時の感覚にとても似ていた。
「気づいたんだね。でも似てるんじゃないよ。僕はぼく自身の闇をPSYクオリアで形成したものなんだから。」
「ぼくの闇……。」
「そう闇…。だからぼくは僕が消えて欲しい。そうだよね?闇は力をくれたが、周りのみんなを傷つける、そんなものをぼくは望んでなんかいない!!みたいな感じかな?」
闇の僕は、ぼくの心の内を全てさらけ出していった。
「だから、今日はお別れをしにきたのですよ。」
「どういう…こと?」
「ぼくは僕がいらない、だから消える。簡単なことじゃないですか。」
「……。」
確かにもう周りのみんなを傷つけたくはない。だから、今闇の僕が消えてくれることは願ってもないことだった。
「ふふっ……今まで楽しくはありましたよ。もう二度とこうして会うことはないと思いますので……さよならです。」
そう言い残し、ぼくに背を向けて去っていった。
「ま………待って!!」
でも、ぼくは去っていこうとしていく僕を力の限りの声で引き留めた。しばらくの間、ぼくの叫び声がこの空間の全てに染み渡るように響き渡っていた。
「待ってよ…僕。」
「何故引き留めるのですか?今のぼくには必要のないものですよ。」
足を止めてくれたものの、ぼくの方を向いてはくれなかった。
ポツン ポツン
ぼくの精神世界なので、降らないはずの雨が降りはじめた。
「今ぼくは泣いているようですね。何故泣くのですか…?」
精神世界の雨。それはぼく自身が泣いている証拠。でもそれは闇の僕も泣いているということ。
「確かにぼくは、もうみんなを傷つけたくない!!でも、もう僕と会えなくなるのは嫌だ!!………僕がいないのを考えると心に穴があいたようで寂しいんだ!!」
徐々に強くなる雨に打たれ、目をつぶりながら再び叫んでいた。僕は知らない、ぼく自身の言葉を。
「穴ですか…。寂しいですか…。」
「えっ?!」
突然、ぼくに雨があたらなくなり少し驚き、ゆっくり目を開いていった。
「僕も同じです。」
そこには、ぼくに傘をさしてくれている僕の姿があった。
「僕も、ぼくの中からいなくなるのは何故か寂しいです。理由は僕自身もわかりません。ただ、ぼくも言ったように穴があいた感じしますね。」
「似てるね。」
「はい。似ています。」
「僕は…」
「ぼくだからね。」
今ぼく達、二人は完全に意思があわさっていた。
「さて、僕は消えたくない。どうしましょうか?」
さきほどまでの妖艶な笑みとは違って、優しげな笑みに変わっていた。だから、それを返すよう優しく微笑みながら答えを返した。
「消えなければいいんだよ。」
「でも僕がいればまた傷つけるかもしれないよ。」
「そんなに優しく笑えるなら傷つけないし、もうぼくは僕の心と完全に一緒になって、二人でどこまでもいけると思うんだ。」
「そうだね。」
そう言いながら僕が一人で持っていた傘を、ぼくも一緒に持った。とっくに雨はあがっていたが二人仲良く相合い傘をして…。