ポケモン

□一直線な心…キュウコン
1ページ/2ページ

もう何百年、人が訪れていないのだろう。


それもそうか、ここはずっと山奥にある火山の、そのまた奥。


人間が来たところで何の利益も無い、たまに私を捕まえる目的で来る人間も居るが。


おや…珍しいな、今日は客だ。


19、20ほどの若造。


「何用だ」


声をかければ、その若造は煤まみれの顔から流れる汗を拭いながら、はにかんだ。


「やっぱりキュウコンって喋れるんだ、スゲェ!」


何を言っている、だから何だというのだ。


「まさかそれを確かめる為だけに来た、などとは言うまい」


此処に辿り着くまでに、人間の足なら丸二日はかかるはずだ。


そんな無駄足など。


「勿論。お前を仲間にしたい、捕まえに来た!!」

「ふん、お前も所詮、そこらの人間と同じか」


少し期待を抱いてみれば、所詮。


「私は誰の仲間にもならない、この地を守るのみ。帰れ」


聞く耳を持たないといった風に、私に一直線に突っかかってこようとする若造へ一発、火炎放射を放った。


「ポケモンを使わず生身で戦おうというのか、根性だけは認めよう」


変わった奴だ。


そう思い目の前で渦を巻き燃え盛る炎から目を離したその刹那、体に圧迫感を感じた。


無駄な殺生はしない、だから確かに手加減はした…が。


「つ…捕まえたっ」

「…」


拍子抜けしてしまった、この若造が言う捕まえるとは、文字通りその腕でしかと抱きとめる事だったのだ。


なんと…面白い。


「…離せ」

「捕まえたから仲間になってくれるんだろ?」

「馬鹿を言うな、そんな事では私でなくても仲間になどならんぞ。そもそも約束などしてはおらん」


えーっ…と更にボロボロに焼け焦げた若造は、その場に座り込みうなだれる。


どれだけ純粋に育ってきたのだろうか、私より何百歳も人生というものを知らないこの赤ん坊は。


「もっと強くなれ、若造。そうしたら今度は、本気で相手になってやろう」


途端明るい笑顔になったような気がしたが、すぐ私はその場を去ってしまったので本当のところはどうだか分からないが。


また来るがいい。


仲間…お前とならば、考えてやらぬ事もない。










次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ