臥竜鳳雛なお姫様

□弐ー月夜の出会いー
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今日は満月


白く淡い光を放つ月に照らされた儚い桜がとても美しい。

春と言えば桜。綺麗だなぁ・・・


「遅いぞ家康」


「すまん、すまん」


そんな現実逃避も永くは持たない。
ボクの腕を引く男ともう一人の会話のせいで現実に引き戻された。

ボクの現状。

in大阪城なんか立派な襖の前。

右手はがっしり徳川家康に掴まれていて、
逃げようにも逃げられない状況であります。

逃げられたとしても石田三成に一瞬で捕まるのがオチだ。最悪殺される。


「三成、着替えは良いのか?」


「そんなことをしている時間が無駄だ」


「はは、お前らしいな」


「秀吉様、連れて参りました」


中から低い声が帰ってくる。

威厳に溢れるその声を聞き、無意識に右にいる男を見上げた。

返ってきたのは人の良さそうな笑み。
動く口は「だいじょうぶ」と。

襖が開く。

右手の温かさが消え、代わりに左手を握られた。

石田三成はどこまでも徳川家康とは正反対で。

ボクの手を握る右手は死人かと思うほどに冷たく、半ば引きずるように中に引っ張って行く。

でも、手を掴むその力は優しく篭手も外されていて。
こけそうになるたび然り気無く支えてくれるその気遣いにボクの頭は混乱するばかり。
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