輪廻再会

□伍話「賞賛」
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「「…っ!?」」


佐助と海都が怯えたように肩を跳ねさせる。


だが海都はすぐに心配そうに覗いてきた女中に大丈夫だと返し、
怒号を発した張本人である弁丸を見た。

はぁはぁと肩で息をし海都と佐助を睨みつける。


「髪を隠すなど、絶対にならぬ!」


琥珀色の瞳は怒りと共に悲しみも孕んでいて海都を戸惑わせた。

何故怒っているのか、
ましてや悲しませることなど言ったつもりはない。


自分達は正しいことを言ったはずだ。


「しかし、この髪はどうしても目立ってしまいますので…」

「それがどうしたと言うのだ!」

「…弁丸様はお命を狙われているんですよ?」


佐助の援護に更に口を開こうとするが弁丸様の一言で声になることはなかった。




「おれの髪自体、目立つものであろうが!」





正論。


そう、正論なのだ。


だから、何も言い返すことが出来ない。

弁丸様のような鳶色の髪をしたものなら町に何人かは居るだろう。
けど、目立つものは目立つ。それに変わりはない。


それでも、それでもだ。
俺達は髪を隠したいんだよ。


別に嫌いなわけじゃない。
家族が綺麗だといってくれた髪だ。それは佐助も同じだろう。


でも、この髪には嫌なことが多すぎるのだ。


俺達は三人とも、この髪が原因で孤独だったのだから。

ギリ、と唇を噛み締める。

怖いんだ、拒絶されるのが。
人々のあの、侮蔑と畏怖が篭った視線が。


「髪を隠すな」


ああ、この方は残酷だ。
俺達の気持ちをよく理解しているだろうに。


「もったいないではないか」

「「…え?」」


続けられた言葉に驚き顔を上げる。








「海都の髪も佐助の髪も、この広く偉大な大空を染める美しい色だろう?お前達に、とてもよく似合っているのに」










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