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□#君に恋する
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口を開けば光クラブだゼラだと、一つしかない眼をきらきらと光らせながら楽しそうに語る彼を見てきた。悔しいくらいに生き生きしているから、俺は面白くない訳なのだ。
わざとらしくため息をつくとおい聞いているのかと俺の肩を揺さぶる。適当に相づちを打てばちゃんと聞けと平手打ちをされる。頬がじんじん痛む。
昔から変わっていないところなんて、俺より背が低いことと、下睫毛。変わった所は無限数。強いて一番を上げるとすれば、一日の内「ゼラ」と口にする数が半端じゃないこと。
嫌にもなるだろう。一日の内にゼラと同じ数だけ「タミヤ」と呼ばれてみろ。そんなに幸せなことはないだろう。
惚けていたらニコが俺の事を気持ち悪い顔してるぞなんてゆうもんだから。まあ現実なんてこんなもん。

「お前背伸びたな」

「急になんだよ。嫌みか?殴るぞ」

「そんなつもりじゃねえんだけど。いや、背、伸びたよな。」

小学生の時から比べたら、と言おうとして飲み込んだ。あたりまえか。
小学生の時のお前?そりゃかわいかっさ。今と違ってかわいかったさ。遊びに誘ってやったら涙ぐんでさ、声震わせて喜ぶんだ。かわいいだろ?最近笑えるようになったじゃん、ってゆうと顔真っ赤にしてありがとうって喜ぶんだ。かわいいよなあ。

で、なんだよ今のお前は。


「そんなにゼラがいいのかよ。」

「…は?」

「だから、そんなにゼラがいいのかよ。」
俺じゃ駄目なのかと口に出かかった言葉は飲み込んだ。駄目だ。泣きそうだ


「…おまえの家さ、家族、仲いいよな。」


「毎日「なんで生まれてきたの?」って言って毎日泣くんだ。「あんたなんか」って「いなければよかったのに」って。毎日泣くんだ。それが俺の母親だよ。俺の見てきた大人だよ。
 そりゃ小学生の時は毎日辛くて、家に居ても煩わしく思われるだけで、学校だって全然楽しくなくてさ。毎日辛かったよ。俺が働かなきゃろくに金もはいってこねえ。
 でも俺はタミヤに救われた。タミヤだけを信じて生きてきた。タミヤだけが俺の友達だった!タミヤだけを信じてたはずなんだ…。
 タミヤの家に行く度に、家族のあったかい感じとか。笑い声とか冗談いいあったりとか、優しい家族とか…
 ああ家族ってこんな感じなのかなあって居心地のいい場所だなあって。でもな、俺、おまえの家大嫌いなんだ。」


「ちがう、羨ましかったんだ。
 愛されてるお前が、羨ましくて羨ましくて憎くて憎くて憎くて!!」

「ずっと言えなかったいや言わなかったおまえに嫌われるのが嫌だったおまえを頭の中で何度も殺したでもおまえに見放されたら俺は今度こそ駄目になる」

「俺はおまえが嫌いだ、大嫌いだ。愛されてるお前が嫌いだ。
 俺が愛されてないことなんて知ってる知りたくもなかった!」

「感情を無くすのは簡単なことじゃない。今更おまえに何を言われようが関係ない俺はゼラに従うまでだ。」

「タミヤ、おまえはいつも俺の邪魔をする。」


「また俺の邪魔をするのか」



ニコ、と手を伸ばした。その手を振り払い一度だけ俺を一瞥すると一度だけ頬を緩ませふわりと笑った。
歩き出すニコの狭い背中を見つめていた。頭の中でまだ幼いニコが両目で俺を見て、タミヤと嬉しそうな声で名前を呼んだ気がした。気がしただけだった。
また、とはどうゆうことなのだろう。ニコが忠犬を演じる為のに俺は邪魔だということなのだろうか?少しでも俺の記憶が頭の隅に残っているということだろうか?忘れられないのだろうか?
そうだとしたら。
それは、


END

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