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□溶けて消えた
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俺は一体なにをしているのだと自分が嫌になることが多々あった。友人が目玉を抉ったのである。
止めるべきだったのか?それさえも狂った頭では彼の忠誠心を傷つけてしまうのが怖いと思ったのだ。
彼の世界は、半分になった。その目で一体なにが見えるというのだ。
両目でも全てを見通すことは不可能だったのに、片目でなにが見えるというのだ。
ニコは馬鹿であった。
そして俺も馬鹿だった。
「俺は今も昔も変わっちゃいない。ただ昔よりも少し強くなった。それだけだ」
そう淡々と話すニコの横顔を見つめていた。
昔と変わった所と言えばそれこそ片目だけな所くらい。あと声が少し低くなったかな?
昔の事をかんがえていた。彼を巻き込んだのは俺だった。間違いなくそれだけは事実であって曲げられる事の無い。
ゼラがなにをさせようと、ニコがそれを実行しようと、俺が彼を巻き込んだのである。
「なんで泣くんだ、笑ってくれ。」
まるで、この晴れ舞台に笑う以外ないだろうとでもいうように、笑えない俺を不思議そうな顔で見た。
思わずニコの腕を掴んだ。ほんとはその華奢な身体を思い切り、骨が砕けてしまってもいい抱きしめたかった。
ただ、いまこの腕を離してしまえばもう二度と彼が戻ってくる事はないと思ったのである。
腕を掴む力をギリっと強めると彼が苦しそうに顔を歪めた。
「痛えよタミヤ。離せ」と弱々しく声を漏らすニコが可愛くて。「嫌だ」と俺も反論する。
「痛いって言ってるだろ」
「嫌だって言ってるだろ」
「じゃあ泣くな」
「無理」
「…お前が笑ってくれないで、どうするんだ」
ニコの言葉に弾かれたように顔を上げると彼もまた泣きそうな顔をしていた。
別に困らせたかった訳ではなかったのだが、今ニコが俺の事を考えているんだったらそれでもいいと思えた。
こんなことなら俺が先に抉ってやればよかった。そしたら俺を責めれば良かったのに。
おまえの片目を奪ったのは俺だと笑えた筈なのに。
今更遅いぞ、と心の中の俺が恍惚とした笑みを浮かべているのだった。
一生苦しめ、と心の中の俺が笑い飛ばすのだった。
もう沢山だ。
END