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□或る夢の話
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「ゼラなんか嫌い」

嗚呼神様こんなことを言いたいのではないのです。もはや僕は泣きそうである。目尻がじんわりと熱くなり、悟られるのが嫌で背中を向けた。
ジャイボ、と低く名前を呼ばれた気がした。するともう一度、ジャイボ、と強く僕の名前を呼んだのだ。こんなことをしては嫌われてしまうそんなことは百も承知なはずだ!
どうせ困った奴だとか、そんなことを言われて流されてしまうのがオチなのは目に見えている。せいぜい悲しんでいろと言わんばかりに僕を見るのだ。
そんなことをされたら僕は今度こそ壊れてしまうよゼラ。この気持ち悪い僕の気持ちはしまっておくね。涙が垂れた。

「ジャイボ、僕の話を聞け。」

「嫌だ。顔も見たくない。もうゼラなんか知らない。どっかいけっ」

「ジャイボ。こっちを向けよ」

ため息まじりのその声色に恐怖を覚えて足が、体が心臓が震える。
ほんとうは大好き。嫌いなんてありえない。ゼラのことがだいすき。
心の中で叫ぶ声が聞こえたらどれだけラクチンなんだろ。ばかみたい。

骨が、悲鳴を上げる。
なにをされたのかが分かったのはその数秒後。
抱きかかえられたらしい、背後から。ぎゅうと強い力で抱きしめられて息が詰まる。ゼラの甘い匂いがして頭がくらくらした。
思わず慌てて腕を振り回すとその腕がゼラの顔に当たって眼鏡がアスファルト道路の上に叩き付けられた。
それでも、ゼラは離してはくれなかった。離さずに居てくれたのだ

「僕ゼラがなにをしたいのかわからないよ。」

「僕はジャイボを抱きしめたいと思った欲求に忠実に従ったまでだ。」

「それがわけわかんないって言ってるの。ほら、はやく。離してよ。突き飛ばしてよ。」

「断る。」

「なにがしたいんだよ。」

「ジャイボ」

「なに、」

「僕はジャイボが好きだよ」



「ずっと言えなかった、」

「ずっと言ってやれなかった。」

「僕は、」

「お前のことを」


その先は、聞いていられなかった。
なにもかもを投げ出して手に入れたこれは間違いじゃなかったのだとゼラは笑ってくれるだろうか。
しかし甘い言葉に支配された僕の脳みそは現実を見ることをやめたのだった。
息が、詰まる、感覚。




『玩具のくせに感情をもってやがる!!』

響いたのは罵声






END

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