ssbook1

□嘘吐きと依存症
1ページ/1ページ


「お前が好きだ」
ふわりと笑った彼は俺の癖毛を撫でてそれから「なんてな」とあざけるようにまた笑った。
俺のことが好きで好きで夜も眠れないくせに。俺がいなかったら駄目になってしまうくせに。ゼラは素直じゃない。
埃臭いソファーに腰掛けていたゼラを無理矢理押し倒して、帽子を奪うと後方に投げ捨てた。ゼラは驚いて目を見開いているが抵抗はしなかった。
ほんとはこうゆう展開をまってたんだろ?なあ。瞼に口付けるとぎゅうと堅く目を瞑ってしまった。
頭を撫でればまたおおげさに体を跳ねさせる。全部の反応が可笑しくって。

「ゼラ、俺のこと好きなの?」

目を逸らして黙りこくったゼラの頬はほのかに赤い。その頬を撫でるととろんとした目で俺を見た。視線が絡み合って暫くの静寂がおとずれた。
もうすぐ夏になるってゆうのにこの古びた廃墟はひんやりと冷たい。
俺が瞳を閉じてキスを求めると静かにゼラもそれに応えてくれる。口付けた唇は燃えるように熱い。
すぐに離れていく熱を逃がすまいと頭を固定してまた口付ける。
すると恥じらいながらも俺の首に腕を回して応えてくれる。
ここまで俺のことを理解しているのだったら、今から俺がなにをしようとしているかも分かる筈なのに。

俺は、ゼラの白い喉に両手をかけた。


「くるしっ…タ、ミヤ」

「理屈っぽい性格も、俺の光クラブで好き勝手にされるのも支配されるのもこりごりなんだよ。」

「っ…はっ、タミヤっ…」

「やめろよその目で俺を見るんじゃねえ。虫酸が走る。俺はお前が嫌いだ、嫌いだよゼラ。」

生理的なのか否か、ゼラの瞳から涙が零れて落ちた。その涙に口付けて腕に込めた力を強めると唇を重ねる。
興奮でくらくらする。ああ、綺麗だゼラ。病的と言えるまでに白い彼の肌がみるみるうちに赤く紅潮してゆく。
涙を溜めた瞳はきらきらと光って綺麗だ。
堅く閉じていた唇を無理矢理こじ開けさせるとその隙間から舌をねじこむ。ぬるりと絡んだ熱いそれにまた俺はくらくらと。

「大嫌いだゼラ」

「…っ、い、やだっ…タミヤっ…!」

「…」

綺麗な顔が歪むのは愉快だ。
ぱっと手を離すと激しく咳き込んで俺を涙の堪った瞳で睨む。肩で息を整えているゼラにまた口付けた。

「なんてね。」

俺はゼラのこと大好き。



END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ