ssbook1

□愛することをやめられない!
1ページ/1ページ


ツプリ。

鋭い刃は人間の弱い皮膚など簡単に貫通して、すう、と後を引けば血液がぽたりと床に垂れ、ぐり、と回せば肉がえぐれる。
血管はひくんひくんとまるでエラー信号を全力で叫んでいるようにひくついている。
僕の血は赤かった。真っ赤だ。この液体が全身に巡っているのだと思ったら少しだけゾッとして、
それから、薔薇の色だ。と考えて少しだけ嬉しくなった。ゼラにも同じ液体が流れているのだろうか。
ゼラでも僕のことを考える時が一瞬でもあるのだろうか。
同じ赤色の液体が身体を巡って、僕がこんなにもゼラの事を考えているのだから、ゼラだって僕のことを少しくらいは考えてくれていても不思議じゃないのに。
でも僕は知っているんだ。ゼラはそんな人間ではない。そんな安易な人間じゃない。
ゼラの中身はきれいなものでできている。きらきらしてて、すごく透明で、眩しくて僕は目が開けていられない!
そのなかに、僕なんかがいていいはずがない。
じゃあ仮に、ゼラのなかに、少しだけでも僕がいたとして、本当に仮なんだけど、僕がいたとする。
ゼラの中に僕が居るということは、凄く幸せでそんなことが起こるというのなら僕は死んでもいい。
でも、そんなのゼラじゃない。僕なんかが踏み入っていい領域ではない。きれい、きらきらしている、眩しい。
話しが少し逸脱してしまったが、言いたいことはこのことではない。
ゼラは僕が自分で腕を切ったりすると綺麗な瞳からぼろぼろと涙を流してもうこんなことをするな、と。二度とするんじゃない、と泣くのだ。
うん、わかった。もうしない。そうやって呟くけど涙でぐしゃぐしゃになる顔が可愛くて、可愛くて、僕も泣いちゃうんだ。
ゼラは僕のことをきれいだって言ってくれるんだよ。こんなに醜い僕の事をきれいだって言ってくれるんだ。
きれいな身体を傷つけたら駄目だって、二度とするんじゃないって。あのゼラが、涙を零して懇願するんだよ。
あのゼラが!!涙を零して!!!
嗚呼あのときの興奮が忘れられない!!嗚呼あのときの胸の高鳴りが!僕の鼓膜を叩くのだ!!

プツリ。
雫がぽたりと床に垂れた。

僕は_______。





END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ