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□モノクロカラー
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最近これと言っていい事もなく、楽しい事もなく。私は何故生きているのだろう。同じ毎日の繰り返し。
流れる景色をぼんやりと映しながら私はまた歩き出す。無意味なこの生活もふと気付いた時にまったく別の色に変わっているのかもしれない。
けれどもそれはずっと先のような気がした。
(今の私には関係ない。)
下駄箱の中の靴を取り出し履き替えると校舎を出た。
その時ふと思い出したのは花壇の花。
あぁ忘れるとこだった。
毎日の水やりは大切な事だ。一日で枯れる訳ではないだろうけれど忘れた日は何だか焦燥感にかられてしまう。
枯れたらどうしよう
そんな思いをしたくはない。だから水をやる。それだけだ
校舎裏に回って花壇用のジョウロに水を入れて花に水分を与える。
そして目に付いたのが黄色い物。拾い上げてマジマジと見た。
…これはテニスボール?
それと同時に「どこだ?」と少し焦った声が近場で聞こえた。
目をやれば目立つ髪色。向日岳人。ただのクラスメイト。
私が無言で立っていると向日岳人は私に気が付いたのか近付いてきた。
「あっ!お前が見つけてくれたんだな!!どこ探しても見つかんなくってさ」
照れた様に笑う彼は可愛くて何を言えばいいのか分からず私はゆっくりとボールを差し出した。
「さんきゅっ」
彼はボールを受け取ると足速にコートがある方向に向かった。と、思ったら立ち止まり振り返った。
「お前いつも水やり偉いな!!花も喜んでんじゃねぇの?」
じゃっ!と言って次こそコートに向かった彼から私は目を逸らす事が出来なかった。
カタンッ
私の手からジョウロが滑り落ちた。
バッとしゃがみ込んで頬に手を当てる。熱い熱い熱い。
(世界に色がついた)
(こんなにも花達は綺麗だったんだ)
(どうしよう…ドキドキしてる!!)
end.