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□ジンギスカンキス
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暑さも落ち着いて来た秋の授業中。
隣りを見ればスヤスヤと眠るジローちゃん。

ジローちゃんのあどけない寝顔に自然と顔が緩む。




私とジローちゃんはそんなに話した事がない。それは私が人見知りなせいもあるし、ジローちゃんが大抵寝ているせいでもあった。

本当は仲良くなりたいしバカな話とか、してみたい。
でも残念ながら私の性格上そのキッカケをつくる事が出来ないでいた。




「ん…」


もぞりと寝返りを打ち、身体を私の反対側に向けるとまたスヤスヤと規則正しい寝息が聞こえる。


ジローちゃんはいつでも自由だ。



こんなに自由でみんなに好かれている人なんて私はジローちゃん以外に知らない。
みんなに好かれてるジローちゃんなんて本当はちょっと嫌だけど。



しばらくして黒板を見れば思っていたよりも進んだ授業内容。私は慌てて黒板に書かれた文字をノートに書き込んだ。



「…ふぁ」

視界の端でジローちゃんが動いたのが見えたから私はジローちゃんを見る。あ、起きてる。
ジローちゃんは顔だけを上げた状態で、まだ夢と現実を行き来しているのか目は半分程しか開いていない。

私が異様に見つめ過ぎていたのか、私の視線に気付いた様にジローちゃんは私の方をゆっくりと見た。


「…おはよ」


ゆっくりと動いたジローちゃんの唇。私は慌てて頭を上下に勢い良く二回振る事しか出来なかった。


途端パタリとまた机に突っ伏したジローちゃん。あ、また寝た。





「おやすみ」

幸せそうに夢の中に行ってしまったジローちゃんに小さく私は呟いた。





ジローちゃんとのキスはどんな味がするのかな。ジローちゃんはジンギスカンが好きだからきっとジンギスカン味のキスなんだ。

そんな妄想を膨らませながら私は授業を上の空で受けていた。




end.

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