その他学校
□好きだから特別!
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「ちょーだいっ!」
「は?」
朝の教室で満面の笑みを私に向ける清純を見て時間が止まった。(気がした)
「ちょーだい!」
「いや、だから何を」
「チョコレート!今日は聖なるバレンタイン。世の中は可愛い女の子が頬を染めて好きなあの子にチョコレート!な、日なんだよ?」
「いや、うん。そうだね良かったね」
そんな熱く語られても普段からバレンタインに興味の無い私は困る。非常に困る。
「もしかして…チョコ用意してないとか?」
私の様子からチョコが無いのを感じとったのか清純は悲しい表情をして、あからさまにシュンとうなだれた。
「…ごめんね?ていうか清純チョコ沢山貰ってんじゃん」
清純の持っている鞄を指差せば鞄に入りきらなかったチョコが何個かこぼれ落ちた。
「全部義理チョコだけどね…はは」
「ごめんね?」
「謝んないでよ余計に悲しくなるでしょ!」
それでもそれだけの数を貰えるっていうことは凄いと思うんだけどな私。
「…あ」
「どしたの?」
「チョコはないけど…」
確か…、と私は自分の鞄に手を突っ込んでガサガサと中をあさる。
「カントリーマアムならあるよ」
あった。
今日食べようと思ってたおやつ。昨日食べたくて買ったわりに余っちゃったんだよね。
「くれるの!?」
「うん。これでいいなら」
はい、と清純にカントリーマアムをひとつ渡す。
「うわー!うわー!大事にするよ!これずっと大事にする!」
「いや食べなよ」
「でも今日一日は食べないよ!目で堪能してから明日にでも食べる事にするし」
「カントリーマアムそんなに好きなの?」
私がそう言うと一瞬、清純は豆鉄砲くらった様な顔をした。なにその反応。
「うーん、カントリーマアム好きだよ?確かに好きだけどね。やっぱり好きな子から貰えたらめちゃくちゃ嬉しいし」
それじゃ南に自慢してくるね!と、カントリーマアムを掲げて清純はバタバタと教室を出ていった。
「好きな、子?」
教室に残された私は清純が走り去った教室のドアを見つめて一気に顔が熱くなった。
end.