小説
□あまい、After5
1ページ/1ページ
Stir it constantly so that it won't scorch
一際眩しいヘッドライトが俺を照らす。車は目の前ですい と止まった。いつものようにドアを開けて、当たり前のように助手席へと座る。
運転席には、かわいいかわいい俺の恋人。
「なあ、何食べる〜?」
ピピと空調を調節しながら健一が問う。暑がりな俺のために、さりげなくクーラーの温度を下げてくれるのだ。気がよく効く。
ネオンの街を二人は通り抜ける。
健一の横顔を伺っているとチラリと目があった。
「聞いてる〜?タカヒロさーん」
おまえに見とれていたなんて言えない。
「んー、健一決めていいよ」
「えー、んー…そーだなー」
…赤信号、
「俺ん家、くる?」
(トマレ)
声の機微を見逃さない。
「いや、俺ん家さーこないだもらった旨い酒、あるし。料理俺、つくるし」
アルコール、は言い訳でしょ。
弁明するような健一に言う
可愛さ余って、いじわるしたくなる。
「誘ってんの?」
「!…っ……」
暗闇なのが悔やまれる。今、健一はきっと物凄くかわいい顔をしてる。
沸き上がってくる笑みを噛み殺して。
「積極的やねー、健一くん」
揶喩するように言うと、健一は(きっと)頬を染め、こちらを恨めしそうに見て、開き直ったように、言った。
「…言わせんなや、バーカ」
…ぐ……今のはキた。ヤバイ。
「早く食べたい」
−健一が
冷めた目で見られる
「……エロオヤジ」
滑るように車は走る。
見慣れたネオン。
健一の家はもうすぐだ。
ももとアイビー、
旨い酒、
旨いメシ。
最高じゃないか。
今日も俺はお仕事がんばりました。ご褒美くらい、いただきます、よ神様。
穏やかに時を刻む。
眠ってしまったももとアイビー、
のみつくした旨い酒、
胃袋に納まった旨いメシ、
そして、今まさに
俺に押し倒されようとしてるのは…
いじらしくて従順な
かわいいかわいい俺の恋人。
(焦げないようにそれを絶えず掻き回しなさい。)