小説

□Black or White
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加湿器の音だけ空気の下の方で動いている。
眠くなんかないわ!と虚勢を張って、落ちてくる瞼と必死に格闘していた健一だったが、抗え切れず。
いきなりぽてり。と頭を横たえたかと思うと、そのまま俺の足を枕にして健やかな寝息をたてはじめた。

(秒殺やんけ…)

さっき俺の台本チェックが終わるまでは寝ない!なんて言ってたのに。

(まぁ、しょうがないか)

柔らかく閉じられた瞼に滲み出る疲れを見留めて俺は息を吐いた。

飄々としているようで完璧主義者なこいつは、また一週間息継ぎもせずここまで来たのだろう。
…一週間、7日間の空白と同時に逢瀬も7日ぶりな事に気付く。
(……7日ぶりなんですけどー)
まだまだ健全なオトコノコ、なのだ。
一週間のブランク、は正直、限界。
(なんで寝ちまうんだよ…)
気付いてしまった体の奥で燻るものにまた俺は大きく息を吐いた。



***



「んー、あ、ヤ、たかひ…ろぉ」

「ん…はァ……やんッ!」

「も…しつこ、いッ……ふ…」


………なんだこの状況は。
……………なんだこの状況はァアア!?

ギリギリのところで声を押さえ付ける。
健一はいまだ体を横たえたままである、が、
あられもない声を上げている。

……ちょっとまて、

大きく深呼吸をしてから努めて冷静に現状を分析する。
寝てしまった健一に、娘達が、寄ってきて、遊んでくれと、父親にちょっかいをかけだして、そして、そして、舐められて健一は……

俺じゃねェエエエ!
犬だから!俺じゃないから!

渾身のツッコミも虚しく今だ健一は俺の名前を呼び続けている。

「あッ…きも、いわ…ッ…」

…今キモいっていった?!
いやまあ、犬だし、ベチャベチャだし、犬だし、俺じゃないし…

だがしっかりとダメージを受けている俺がいた。
キモいって……

ももとアイビーを必死で引きはがしにかかるが、悪戯を覚えてしまったこいつらは中々玩具を離そうとしない。

「あ、…やばい、て…ッ」

色んな所をベチャベチャのヌルヌルにされてもまだ健一は起きない。
高揚した頬にたまらない気持ちが募る。
や、やばいのはおまえだろ…
生殺しもいいところだった。
はあはあと荒い息を吐き出す健一。

「たかひ、ろぉ…もっと…!」

健一は無意識の内に俺の腕をぎゅっと掴んだ。

…ああ、もうだめだ。
もう知らんぞ俺は

俺は目一杯手を伸ばして、視界の端にあった骨ガムを掴むと、力いっぱい廊下へ投げた。
いきなりの音に驚いたように二匹はびくりと体を震わせ、そして走っていった。
…俺の気迫に怖じけづいたのかもしれないが

奴らが残した唾液を丹念に拭きとって、それから、くちづける。

(ももとアイビーに健一の操は渡さん…!)

幾分か薄くなってしまった俺の匂いをマーキングするかのように肌を触れ合わせると、色んなものが高ぶってくる。

(健一も健一だ!フェロモンしまえ!俺にだけ使え!)

止められなくなる。

(キモくて結構だっつの!)
(キモくて変態だよ、どーせ。…悪かったな!)



犬にライバル意識を燃やし、必死に吸い付いてくる孝宏の下で、

――健一は薄目を開けていた。

(くっくっく、阿呆やな)
(簡単に引っ掛かるなあ、孝宏は)
(7日ぶり、なんやで)
(本読みなんて後で、いいやんけ…)



天使か、悪魔か。
ぺろりと心の中で舌をだした彼が
いつから目を醒ましていたかは……神のみぞ知る。










Black or White











―――――――――――――――
いっそ、空が抜け落ちればいーい♪(それはちがう)
たっつんの方です。あの曲なんてsksz^p^?

というわけで小悪魔けんいちでした…おそまつ…

にしても馬鹿な話^∇^………m(__)m

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