小説

□シンデレラハネムーン
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「愛してるよ健一」
「ッ…何、いきなし」
「結婚しよう」
「!!!!!え、な、…本気?」
「…本気に決まってるだろ」
「……うそや、」
「嘘じゃない」
「……ッ」
「なんで泣くの」
「だって孝宏がそんなん…」
「信じられない?」
「ちゃう…なんか、夢みたいで…」
「返事は?」
「…俺でよかったら」


――もらってください。


…なんて、
計画は一応、たてていたのだ。

「愛してるよ、健一」
「…なんや、胡散臭い」


現実は、うまくいかない。








シンデレラハネムーン









かき氷を思い出す。ブルーハワイの。
そんな色の海だった。
白い浜、水平線の上には、でかい太陽。
大きな麦藁帽と空港で買った派手なアロハ
健一が俺をよぶ。

「たかひろー!海やー!すごい色!入浴剤みたい!」

似たような事を考えていたのに少し笑う。こんな常夏の楽園にいてまで、俺達は庶民的。

「こけんなよー」
「わーってるって!こけるわけないやろー何歳だとおもっ」

声は砂へと吸い込まれる。
…だから言ったのに。
健一は頭を砂に突っ込んだまま動かない。やっとぷは、と上げた顔は羞恥からか赤く染まっていた。
「…あほー!早く起こせー!」
「…ハイハイ」

ひっぱり起こしてやると健一は、ぺっぺと口に入ったらしい砂を吐き出した。

「…砂だらけになった…」
「子供か」
「うっさいなー、……ちょっと俺砂落としてくるわ!」
そう言うと健一はがばりとアロハを脱いで海へと走っていった。
子供か!また同じ台詞でつっこむ俺だった。

白い背中が眩しい。

「たかひろー!ちょっとこいやー!魚さんおんねん!熱帯魚みたいな!」

健一を見遣ると、鋭角に飛ぶ反射光が目を焼いた。
やれやれと日蔭から抜け出す。
ビーチサンダルと砂が擦れる音とからっとした透明な陽射しの中で俺は考えていた。
この旅が、終わるまでに。
壮大な計画に、すこし速くなる鼓動だった。

期待と不安、で
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