†NOVEL†

□03:愛のドレイ
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□■お題小説□■

03:愛のドレイ


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上司部下、と言う関係では毎日のように顔を会わせることが出来る。
でも、恋人として顔を会わせたのは、もう随分前のことのように思える。
ここのところ仕事が山積みで、まったくと言って良いほど恋人として抱き合うことも、睦言を交わすことも出来ていない。
いつもの調子で抱きつこうものなら、本気で怒鳴り散らされる。
それほどに、リーバーの精神は限界に来ていた。
コムイはコムイで、リーバーと関わる時間が極端に短い上に、事務的な会話しか出来ないことに神経をピリピリさせていた。
そして、お互いの限界が来たのはそんな多忙な日々が二ヶ月目を半分ほど過ぎたときのこと。

「リーバー君っ。」
「何スか?」
「仕事、後どれくらい?」
「この書類の山片付けたら、ですけど…。」
「僕の方はもう終らせたから、手伝うよ。」
「へ?」

リーバーは呆けた顔で、自分の横に立っている上司を見上げた。
つい数時間前に行ったときは、司令室に所狭しと積み重ねられた書類の山があった。
それを、たった数時間で処理したと言うのだろうか。

「あれ、終らせたんスか?」
「うん。」
「本当に?」
「バッチリ抜かりなく。」

そう言って適当なところから引っ張ってきた椅子に腰掛けて、リーバーの書類を一枚ずつ仕上げていくコムイ。
自分の上司の凄さを目の当たりにして、リーバーはずり落ちた眼鏡をそのままに、暫く放心していた。

「まさかこんなに早く終るとは…;;」
「僕って凄いよね〜★」
「普段からこんくらいのスピードで働いてもらえませんかね?」
「今回は限界だったんだもん。」

仕事をすべて仕上げ、二人して自室に戻る途中、コムイはリーバーの手を握ったまま離さないでいた。

「流石にね、充電切れ。」
「室長、どんくらい寝てないんですか?」
「体力的な問題じゃないよ、リーバー君。」
「え?」

言葉と同時に、リーバーはいきなり抱き締められた。
一見華奢に見えるコムイだが、上背はリーバーより10センチ近く高く、思いの他力強い。

「し、室長っ!?///誰かに見られたら…っ!!///」
「僕らより先に休養を取らせてるんだし、今頃ぐっすり眠ってるよ。誰も見てない。」
「で、でも…///」

ぎゅっと抱き締められていると、コムイが如何に自分を渇望してくれていたのかが伝わってきて、リーバーは抵抗が出来なくなった。
抱き締める、と言うよりは、縋りつく、と言う表現の方が正しいのではないかと言うほどに、コムイは痛みを感じるほどにリーバーを抱く腕に力を込めてしまう。

「リーバー君に触れなくて、つらかった…。」
「コ、コムイさん…///」
「そうやって、僕の名前を呼んで欲しかった。抱き締めて、キスしたかった…。」

少し憂いを滲ませる笑みが、リーバーの胸を苦しくさせた。
リーバー自身、どんなに忙しくても、コムイの事を想わない日など無かった。
優しく抱きとめてくれる腕に、飛び込みたかった。
髪を撫でて、名前を呼んで欲しかった。

「コムイさん…っ。」
「やっと、恋人として君に触れるね…。」

くしゃっと顔を歪めたリーバーの両頬を優しく包んで、コムイの唇が顔中にキスの雨を降らせる。
最後に行き着いた、疲れのせいで少し乾いているリーバーの唇に、コムイがそっと口付ける。
労わるよな、包み込むような口付けに、リーバーは全身の力が一気に抜けてしまった。

「おっと…っ。」
「あ、…すみません…っ///」

腰が抜けてしまったリーバーの体を支えると、コムイはこれ以上ないほどの笑顔を浮かべた。

「僕のキス一つでこんなになっちゃうほど寂しかった…?」
「…あ、当たり前でしょうっ!?///最後にキスしたのいつだと思ってるんですかっ!!///」

可愛らしいリーバーの反応に、両頬が緩み切っているコムイ。
そんな表情すらも愛しいほどに、二人が触れ合えない時間は長く感じられていた。

「これ以上のことシたら、リーバー君ふにゃふにゃになっちゃいそうだね。」
「毎回ふにゃふにゃにさせてる人がよく言いますね…っ///」
「でも、久しぶりだからふにゃふにゃじゃ済まないかもしれないよ?」
「〜〜〜っ///好きにして下さいっっ!!///」

こんなにも渇望してしまうほどに、愛しい存在。
君のためなら何でも出来る。
貴方のためなら何にだって成ってみせる。
僕らは…
俺らは…
お互いに、愛のドレイ。
それは、何て幸せな言葉。









END
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