サブ書庫(D.G)

□掬い上げたい希望
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「……ビ、ラビ」

何度も呼びかけてくる声に『ラビ』は瞼を上げた。怪訝な表情を浮かべて幾らか低い位置にある白い頭が視線の先で傾いた。アレンだ。

「何をぼんやりしているんですか。置いて行きますよ」

少し呆れたような声にラビは辺りを見渡す。薄暗い見慣れた廊下は教団の、ホームのものだ。任務に出ていた筈なのに、何時戻ったのだろうか。まるで覚えがない。

「あのさアレン、オレ何時帰ってきたんだっけ?」

「しっかりして下さいよ、ラビ。立ったまま寝てたんですか? 昨日皆で帰ってきたところじゃないですか」

「昨日? 皆でってそんな大人数で任務なんか行かねぇだろ?」

大体、任務には無愛想な同い年のエクソシスト・神田ユウとあたったのだ。皆、というのは妙だ。質問を重ねると、アレンは不思議そうに銀灰色の瞳を瞬いた。

「もう、どうしちゃったんですか。記憶力はいい筈でしょう? そんなこと言ってる間に皆待ちくたびれちゃいますよ。早く食堂に行かないと」

「何でさ?」

「だから、パーティーをするんですよ。僕たちは伯爵を倒した後、残ったアクマをやっと全部救うことが出来たんじゃないですか。」薄暗い廊下にぽっと灯が灯ったかのように、晴れ晴れとした笑顔を浮かべるアレンにどこか違和感を覚えつつも、ラビはその先の言葉に耳を傾けた。「もうアクマによる哀しみの連鎖は起こらない。これでホームは解散です」

「解散、て」

「えぇ。お祝いとお別れを兼ねたパーティーです。さ、行きましょう」

そんな馬鹿な。ノアの襲撃によって元々少なかったエクソシストの数は更に減ってしまったのだ。元帥も一人減って戦力はお世辞にも十分とは言えない。アクマやノアなど数の上でも不利の一言に尽きるのに、今の状態で伯爵に勝った上でアクマを全て倒したなど、あり得ない。

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