サブ書庫(D.G)

□冷眼傍観タレ
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「結晶型、ねぇ」

一人になりたくて、婦長の目を盗んでぶらりと書庫室にやってきたラビはぼんやりと呟いた。装備型だったリナリーのイノセンス、『ダークブーツ』は今、靴からリングにその形状を変えて彼女の足に納まっていた。勿論、変わったのは見た目だけではない。

「……」

新しいイノセンスの形態の出現に、皆まだ戸惑いを隠せないでいる。まだ未解明な部分が多いからだ。

ブックマンですらその存在を知らなかった。進化する条件も、進化前と進化後の違いもまだ何も解ってはいない。

『そうなったらここには居れん』

今は破損して手元には無いが、普段は装備型として携えている槌を思い出す。もし、あれがリナリーのそれと同じように結晶型になってしまったとしたら。先程のブックマンの言葉に、ずきずきと痛むのはラビの押し殺した心だ。
ブックマンには不要な感情。

「くっそ」

仲間じゃない。作り物の笑顔で、適当に浅く馴染んだように見せかける。それでいい筈なのに。ここから離れるとしても、裏切る以前の問題だ。罪悪感なんか感じないし、淋しくなんかないし、恋しくなんか、ない。

椅子に腰かけて、読んだ覚えのある本を適当に開いて脚の上に乗せる。暫く頭を抱えてラビはきつくきつく目を閉じる。考えるな。

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