サブ書庫(D.G)
□誰が為の
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誰が為の
「…ったく何が『ワシの髪の毛は燃えとらんか』だっつの」
ブックマンが救護班によって運び込まれた部屋から出たラビは呆れたようにひとりごちた。勿論、無事が確認できたからこそそんなことが言えるのだが。
方舟と共に手に入れたアクマ製造の『卵』を回収しに教団に潜り込んだ『色』のノア、ルルベルに率いられたアクマたちに襲撃された時はどうなるかと思ったが、その内の一体で最後までしぶとく残ってレベル4にまで進化したアクマも、アレンやイノセンスが復活したリナリー、そして元帥たちによって辛くも倒されて、教団には再び束の間の平和が訪れた。
(……けど、)
その代償は大きかった。最初に襲撃を受けた場所にいたのが、アクマと戦う術を持たない科学班たちが集う場所であったこと、また入り口を塞がれてしまったことでエクソシストの到着が遅れ、多くの犠牲者を生みだした。
(リナリーは泣いてたな)
ちらりと姿を見た時、タップの名を叫び号泣するジョニーやリーバー班長の傍で涙を流していた。
あの、初めて教団にやってきた日に偶然目にした時の彼女のように、自分も怪我を負いながら。彼女はまた彼女の世界の一部が欠けたことで傷ついている。
(オレは、記録はしてやれねぇけど)
今暫く、『ラビ』でいる間くらいは彼らの魂の冥福を祈るだろう。