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□お菓子とお勉強
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「薬草を煎じて塗る…?」

私が首を捻っていると、コンコンと音がする。玄関に振り向いて扉を開けると、そこには見慣れた姿があった。

「狩人さん!」

「よっ!」

短く刈り上げた髪に日焼けした肌。太陽みたいなにかっとした笑顔で、彼は私の髪をわしゃわしゃと撫でた。

「元気にしてっかー?」

「おかげさまでね!って、ちょっと!ぐしゃぐしゃになっちゃう!」

「ははっ、悪ィ悪ィ。今日はいい鹿肉がとれたから持ってきたぜ。母ちゃんいるか?」

「もう!母さんは今街に買い物に出てるからいないよ。帰ってくるまで時間があるから私がお茶でも淹れたげる!」

狩人さんの手をぺしっと叩いてべーっと舌を出すと、彼は「ごっそーさん」と言って笑った。

狩人さんを家にあげてキッチンに行くと、棚からカモミールティーの茶葉が入った缶を手に取る。カモミールティーが好きだなんて、見かけによらず可愛い好みだ。沸かしたばかりのお湯を入れて少し蒸す。カップに注いでクッキーと一緒に狩人さんの目の前に差し出す。

「召し上がれ」

「へぇ、お前が焼いたのか?」

「そう。上手いもんでしょ」

「この間まで焦がしてた奴がよく言うよなぁ」

「…ねぇ。喧嘩売ってんなら買ってもいいんだけど?」

「遠慮しとく」

私たちはすぐにお互い笑い合った。

でもまぁ、実のところ本当に最近やっとまともにクッキーが焼けるようになってきたのだ。それまでは何かしら失敗していた。焼き上がりが甘かったり焦がしたり。塩と砂糖を間違えたときは、あまりにベタすぎてちょっと泣きたくなった。

もう少し上手く焼けるようになったら、狼さんに持っていってもいいかもしれない。甘いもの、好きかな。

「赤ずきん。お前医学書なんか読んでんのか」

持っていくお菓子のことを考えていると、狩人さんに話しかけられる。一瞬何のことかわからなかったが、すぐに思い出した。

「あぁ、そう。ちょっとね」

狩人さんが来る直前まで、私は医学書を読んでいた。専門的じゃない、家庭にあるようなものだけど。

「何。お前どっか悪いわけ?」

「え?…あぁ、まぁ、それはそうなんだけど…」

私の膝なんかより、狼さんの足首だ。どうしたら早くよくなるのか。

「あ」

そうだ。

私は勢いよく前にのめり出すと、訝しむ目の前の狩人さんをまじまじと見つめた。

「ねぇ。ちょっとお願いしたいことがあるの」

20130216

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