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□責任をとって
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翌日。ばあちゃんの家を訪れると、狼さんは既に扉の前にいた。

「おはようございます」

「…え、ちょっと!」

私の到着を座って待っていたらしい彼は、私を見るなり微笑んで立ち上がる。私は急いで駆け寄ると、ガッと彼の両腕を掴んだ。

「何で来たの!?治るまで無理して来なくていいって言ったでしょ!?」

昨日、片付けを早々に切り上げて彼を帰す際、私は彼に今後は毎日通わなくてもいい、と告げた。無理をして負傷した足を悪化させたくないからだ。
そのときは「心配してくれてありがとうございます」と、へらりと笑って帰っていったけど、納得したわけではなかったのだと、今ここにいる彼を見て思い知る。

「いえ、本当に大したことありませんから。気にしないでください」

相変わらずのにこにこ顔に、私は顔をしかめる。そして彼の腕をぎゅっと握って、言い返した。

「今は大したことなくても、無理したら悪化するかもしれないじゃない!酷くなったらどうするの!」

狼さんは私の剣幕に驚いたようで、目をぱちぱちとさせて驚いている。それを見て、はっとした。
私、何でこんなにムキになってるんだろう…。

狼さんは、ふっと笑うと私を優しく抱き締めた。

「赤ずきんさんは、優しいですね」

「っ!」

狼さんは背が高いため、私の顔は彼の顎の下にすっぽり収まってしまう。

「僕の心配をしてくれるんですか」

「いやっ、別にあなたを心配してるわけじゃっ!わ、私のせいで怪我したんだから、責任感じてるだけ!」

抱き締められてどうしたらいいのかわからない。私はあわあわとパニックになりながら、必死に反論する。

「あなたが責任を感じる必要はないのに。…まぁ、そこまで言うんなら、責任とってもらってもいいんですけど」

「…は?…ひゃっ!」

べろり。突然、狼さんが私の左耳を舐めた。
そして、低い声で囁かれる。

「責任…とってくれます?」

意味わからない!私が耐えきれずに狼さんをべりっと引き剥がすと、彼は私の顔を見てふき出した。

「あははっ、赤ずきんさん、顔が真っ赤ですよ!」

「う、うるさいっ!!」

絶対からかわれてる!私は頭にきてスタスタと先に家の中に入った。

「待って、赤ずきんさん。さすがに僕、そんなに早くは歩けません」

「もう知らない!せっかく人が心配したのに!」

「…やっぱり心配してくれたんですね?」

「!…あああっ!もう!馬鹿っ!」

20120718


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