□不定期(2018-2021)
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【夢の中の騎士】

 これまでの粗筋!
 テジタルワールドに迷いこんだヒナタ。元の世界へ帰る手懸かりを求めて旅をする中、ひょんなことから光のスピリットを手に入れ、伝説の闘士・ヴォルフモンへと進化を果たす。
 そしてその日の夜のこと、ヒナタは不思議な夢を見るのであった。

『……ヒナタ』

 空も地もすべてが純白に塗り潰された世界で、語りかけてくるのは白狼を模した鎧を纏う戦士。否、その名をヴォルフモン。
 スピリットそのものであり、今はヒナタそのものでもあるはずの、光の闘士。

「ヴォルフモン……」

 名を呼べばヴォルフモンは小さく、けれど満足げに微笑む。その理由を、ヒナタは知っていた。
 初めてのことではない。これは何度も見た夢。いや、何度も語りかけてくれたのに、これまでヒナタが応えることのできなかった、ヴォルフモンからの交信。
 スピリットを手にしたことでようやく確かな繋がりが生まれ、応えることができたのだと、ヒナタは理解していた。

『ありがとう。君が応えてくれたこと、私の意志を継いでくれたこと、礼を言わせてほしい』

 自らの胸に手を当て、まるで祈るように彼は言う。

『そして……君を巻き込んでしまったことを、謝りたい。すまなかった』

 そう言って深々と頭を下げる。

「どうしてあなたが謝るの」

 巻き込まれた覚えは、あるにはあるが、しかし彼にではない。仕方のない状況に追い込まれた。追い込んだのは世界をどうこうしたいらしいおかしな連中だ。だからスピリットを手にした。それは他でもない、自分の意思だ。

「力を貸してくれて、助けてくれて感謝しているわ。ありがとう」

 嘘偽りのない素直な思いだった。
 そんなヒナタに、ヴォルフモンはまるで安堵するように笑みを浮かべる。

『ありがとう』

 なんて、お礼を言っているのはこちらだというのに。思わずくすりとヒナタは笑う。しかしヴォルフモンは気にする様子もなく、ただ真っ直ぐにヒナタを見据える。

『君の剣となろう。いついかなる時も君を守り、君の敵を打ち倒すと、そう誓おう』

 まるで姫君にかしずく騎士のように、ヴォルフモンは片膝をついてそんな誓いを口にする。
 ヒナタもまたそんな彼の瞳を真っ直ぐに見詰める。自らが手にした剣の、背負った使命の重みを確かめるように。
 それは二人の騎士の、始まりの夜の物語――


-終-



SS第92弾はリクエストお題【夢の中の騎士】です。
もはやシリーズ化。
 
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