□不定期(2018-2021)
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file.X「オファニモン」
エンジェモンやピッドモンたち、アポカリプス・チャイルドの他のデジモンたちのデータも洗い直し、それぞれから断片的なデータの抽出に成功する。
一つ一つは米粒のようなデータの欠片。それらを精査し、復元し、組み上げていく。気の遠くなるような作業はまるで巨大な立体パズル。
なにせこれまでのデジモンと違い、当人の元データがセフィロトモンに保管されていないのだ。この間接的なデータでどこまで再現が可能かはわからないが、わからないからこそ試行する。
トライアル&エラー、そしてまたトライ、エラー、トライ、エラー……何度も何度も繰り返す。
そうして――徐々にそれは生き物としての形を成していく。
断片データから解析した本来の姿とは少々、いや、随分と趣の異なるものとなった。
エメラルドの鎧は黒く染まり、硬質の金翼はコウモリのような飛膜へ、禍々しく変容した聖槍はまるで死神の大鎌。
堕天使――“オファニモン∶フォールダウンモード”。
ブラックセラフィモンが混じったことでこのような姿になったのか。いや、デジヴァイスが「フォールダウンモード」の名を示した時点でこれは、元より存在するデジモンのはずだ。
しかし、セフィロトモンに残された過去の戦いの記録には、オファニモンがこのような姿になったという記述はなかった。
「ふむ……興味深いな」
喉をついて出た声は普段より高い、見た目相応の女性の声。肉体そのものが変異しているのだ。当然と言えば当然か。
「ふ、面白くなってきた」
元より“堕天”がプログラムとして仕組まれていたのか。あるいは、種として唯一無二であるはずの“三大天使”に他の個体が存在したというのか。ともすればこれは、デジモンの進化の核心に触れ得るものやもしれない。
突きつけられた謎に思わず口角が上がる。仮面の下ではさぞ悪い顔をしていたことだろう。
だが、ここで退いては真理の探求者たる“鋼の闘士”の名折れというもの。
さあ、解き明かしてやろうじゃないか。
そう笑い、さらなる深淵を覗き込まんと闇へと歩みを進める。その思考さえとうに、堕天使の肉体に侵蝕されているなど夢にも思わず。
辿り着く場所が何処であるのか、それはまだ、誰にも知る由さえない。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを見ている。
果たしてそれはどのような物語へと帰結するのか。
その結末は、機会があればいずれまた語るとしよう――
-終-