-花と緑の-

□第三話 『花とモヒカン狂想曲』
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シーンU:再びの出立(1/2)

 
「それじゃあ、武運を祈るよ」
「うん、ありがと。そっちも気をつけて」

 一夜明けて翌朝。早寝した割には日がまあまあ高くなってから目を覚ます。思った以上に疲れていたらしい。とうに起きて出立の準備を終え、まずはあたしが最初にやって来たジャングルを目指し、これから村を発つというウィっさんと挨拶を交わす。どうやらあたしたちが起きるまで待っていてくれたらしい。次第に遠ざかるに背中に手を振って、あたしは本気で別れを惜しむ。ふと、隣のヌヌを見る。

「行っちゃったね」
「ああ、行っちまったな。……それどういう顔だ?」

 なんだかものすごい不安と心細さが滲み出ている顔に決まっている。ヌメヌメだけを連れて旅立つはめになった勇者の気持ちも考えてほしいものだ。パーティ構成に疑問を持とうぜ。
 ふう、と息を吐く。伸びをして、びたんとほっぺを叩く。

「よし、考えてもしょうがない。いきますか」
「おう、なんか分かんないけどやる気だな!」

 おうともよ。なるようになれ。あたしが勇者だ。ケセラセラ。覚悟を決めて、あたしは朝陽の輝く東の空へ向かって一歩を踏み出す。自棄とは言ふ勿れ。さあ行こうじゃないか、どこまでも。この空の果て、光射す明日へと続くこの路を――!
 
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