つよすぎてニューゲーム

□つよすぎてニューゲーム
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【これまでのあらすじ】

@俺、選ばれし子供として召喚される。
A俺、パートナーのアグモンと旅に出る。
B俺、アグモンとラスボス直前まで辿り着く。
C俺、ラスボス倒す前に別の世界に召喚される。
D俺、シャウトモンとパートナーになる。
E俺、シャウトモンと無双する。<New!


第三話『勇者、ミーツ・スター』


 デジタルワールドは今、動乱の時代を迎えていた。
 それは七人の王による、世界の覇権を懸けた戦い。

 かつて志を共にした七人の勇士がいた。
 多種多様な姿と思想を持つ種族が混在するこの世界には、争いが絶えることはない。そんなデジタルワールドの完全なる統一、悠久の平和の実現を目指し、彼らは立ち上がった。
 月光、火烈、水虎、木精、金賊、土神。六つの名を冠する勇士は一人の王の元へと集い、ただ一つの未来を夢見て戦った。
 だが、やがて彼らは袂を分かつこととなる。

 王の名は、バグラモン。
 六勇士の信じた理想を裏切り、世界を我が物にせんとする、悪虐非道の暴君。
 人々は彼をこう呼んだ。“魔王”、と。

 六勇士は魔王の元を去り、自らの国を興した。
 それぞれが信じる理想の世界を実現するために。
 そして世界は、七つに分かたれたのだという。

 それが、シャウトモンの語った“この世界”の現状だった。
 あるいはただ遠方に、同じデジタルワールドの別の場所に飛ばされただけではと、そんな期待もあった。けれど……シャウトモンの話してくれたこの世界の実情は、元いたデジタルワールドとはあまりにかけ離れたものだった。同じ世界の別々の場所で起こったこととは、到底考えられない。

 そもそも、デジモンの生態からして根本的に異なっているらしい。
 先の戦いで俺はシャウトモンを進化させたが、彼らはその現象自体を初めて目にしたのだという。
 この世界における進化は極めて緩やかであり、デジモンたちは長い時間を掛けて少しずつその姿を変えていくのだという。成熟期や完全体という概念すら無いのだとか。

 そう、ここは間違いなく、俺の知らない“別のデジタルワールド”ということだ。
 俺が元のデジタルワールドへ戻るには、ほったらかしになってるあっちもちゃんと救うには、やはりこの世界における使命を果たす以外に道はない。魔王・バグラモンの討伐という、その使命を。

 だが、それもまた当然、容易なことではない。
 超進化――オメガシャウトモンの力は絶大だ。個の戦力としては恐らく究極体クラス。進化の緩やかなこの世界ではそうそう太刀打ちできるものもいないだろう。それでもこの戦い、いや、戦争を終わらせるには不十分だ。
 どれほど強かろうと、個は個でしかない。
 世界各地で同時多発的に起こる紛争のすべて、何千何万という軍を、たった一人で相手取るなど不可能だ。
 最短距離で真っ直ぐバグラモンの元へ向かい、さくっと元凶をぶっ飛ばそうかとも思ったが、事はそう簡単ではない。なにせ世界中を巻き込んだ戦争だ。もはや大将首一つで収まるわけもないのだ。
 何をするにも手が足りない。たった二人では、できることなどあまりに僅かだ。

 長々と前置きを語ったが、結論を言うなら俺たちは、当面の方針を仲間集めとした。
 しかしそれも生半可なものでは駄目だ。手を組むことで終戦への道筋がはっきりと見えるほどの強者。世界を動かす力を持ったもの。そう、つまりは――“六勇士”を、味方に引き入れる。

「見えたぜ」

 高台からそう言ってシャウトモンが指し示した先を、まだ昼日中だというに黒い霧が立ち込め、日の差さぬその地を見据えて、小さく息を吐く。

「あれが常夜の国・ルナーメア。“月光”のネオヴァンデモンが治める国だ」

 シャウトモンたちの村からもっとも近い六勇士の国、それがこのルナーメアだった。誰なら協力してくれそうか、なんてシャウトモンたちにさえわかるはずもなく、とりあえずは近い順に当たってみることにした。
 俺たちのカード、手持ちの交渉材料は“選ばれし子供”であるということと、オメガシャウトモンの戦力、それのみだ。
 はっきり言って説得するにはあまりに心許ないが、それでもやるしかない。六人のうち誰か一人でも協力を取り付けることができれば、それ自体が次の交渉材料にもなる。全員の説得は難しいかもしれないが、せめて二人を味方に付けられれば、少なくともこの七竦みの状態は打開できるはずだ。

 なんて、そう考えていた時だった。視界の端に、光が飛び込んできたのは。
 はたと目を向ければそれは、星だった。高台からルナーメアへ続く道なき道を、横切るように駆ける黄色い星の形のデジモンと、後ろに続くガスマスクデジモン・トループモン。
 状況は、考えるまでもなかった。

「シャウトモン!」
「ダン!」

 声を上げたのは同時、間髪容れずに動き出すのも同時だった。
 誰かは知らない。何故かも知らない。けれど追われている。なら助ける。それだけのことだ。

「シャウトモン、超進化!」
「オメガシャウトモン!」

 高台から飛び降り、オメガシャウトモンにつかまって急斜面を翔る。瞬く間に敵は眼前へと迫り、そうして――決着は一瞬だった。
 オメガシャウトモンがその鋭い刀剣のような片脚を振るえば、弧を描く光の軌跡が飛翔する斬撃となって走る。閃光の刃は一太刀のもとにトループモンたちを切り伏せ、灰色の残骸が宙を舞った。

「大丈夫か?」

 と、声を掛けてやれば、へたれ込んで呆けていた星型のデジモンは俺たちを交互に見て、やがて跳ねるように立ち上がる。サングラスの奥でその目がキラキラと輝いた気がした。

 これが、この小さな出会いがいずれ、大きな運命のうねりとなるなど、今はまだ、互いに知る由もないことだった――


【続く】
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