□第十夜 蒼天のコマンドメンツ
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10-1 反逆の同士(1/3)

 
 乾いた荒野に湿った風が吹き抜ける。振り返る風上は戦場。見上げる空にはアポカリプス・チャイルドの本拠地“生命の木”が浮かぶ。荒野の出口は程近い。だが、その目前には黒の騎士・ダスクモンが立ち塞がっていた。

「エルドラディモンが……捕縛?」

 突如として現れた黒騎士の言葉に、インプモンは眉をひそめて問い返す。

「どういうことだ?」
「そのままの意味だ。奴らはゼブルナイツをその拠点ごとセフィロトモンの内部に取り込むつもりだ。そうなってはもはや手出しできない」

 故に、と黒騎士は決断を迫るように私たちを強く見据える。突然のそんな話、信用しようにも時間も判断材料もまるで足りないが、さて。

「ヒナタはどうだ?」
「え?」

 共闘を持ち掛ける黒騎士に、喉をこくりと鳴らしてインプモンの返答を待てばしかし、口をついたのはそんな問い掛け。私は戸惑いに思わず頓狂な声を上げてしまう。

「わ、私?」
「ああ。今の話、っつーかこいつか、どう思うよ」
「どうって……」

 気付けば指先に点していた炎も消え、インプモンは黒騎士にも構わずまるで無防備に私に向かって首を傾げる。その深緑の目は真っ直ぐに私を見詰めていた。言わんとしていることは、解るのだけれども。

「意識的に聞き取ったことなんて無いんだけど」

 デジメロディとやらのことを言っているのだろう。命の旋律、だったか。確かに私はそれを理由にワイズモンを信用しようと決めたわけだが。すべて無意識のうち、それも余りに曖昧で不確かなものだというに。そう頼られても困ると眉をひそめれば、インプモンは小さく息を吐いて、

「別にそーゆんじゃねえよ。ヒナタがいいなら別にいいかと思って」

 あっけらかんと言う。私がいいなら? 意味も解らず首を傾げるとインプモンは困ったように頭を掻く。

「信頼しているのだな」

 ややを置いて、そう言ったのは黒騎士だった。信頼……私を? 黒騎士の言葉に視線をやれば、余計なこと言うんじゃねえよとばかり、インプモンは眉間にぐにゃりとしわを寄せる。あら面白い顔だこと。

「いつの間にそんな信頼関係築いたっけ」

 なんて茶化してやればインプモンは「うるせーよ」とそっぽを向く。意外と可愛いとこあるのね。そんなインプモンに思わず笑みを零す。
 そうして、ならばと私はダスクモンに向き直る。

「一つだけ、聞かせて」
 
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