□第十夜 蒼天のコマンドメンツ
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10-4 戦場の再会(1/4)
高い空より咆哮が降る。果たしてそれは勝鬨か、怒号か、あるいは悲壮か。知るはただ、ダークドラモン当人だけ。
ぎり、と一度だけ歯列を鳴らしてレイヴモンは振り返る。その目に強く悲しい光を湛えて。
「申し訳ございません。急ぎましょう」
どこまでも冷静に、気丈に、そう言ってみせたレイヴモンに私は、言葉を返すことができなかった。そんな私に代わって冷たく頷いたのはインプモンだった。
「だな。あいつが戻ってくると面倒だ」
そう言ってインプモンは視線を塔の中へ向ける。私は、甘く唇を噛んで小さく息を飲む。足を取られている時間など、もう無いのだ。一拍だけを置いて、前を向く。
「ええ、行きましょう」
そうして私たちは、魔王が眠る封印の部屋を目指して前進する。後ろを振り返ることは、もうしなかった。
「さて、問題はここからだね」
無人の塔を降り、回廊を駆け、古城をひた走る。ただでさえ一度来たきりの場所。地上に出たことで印象もがらりと変わり、はっきり言ってどこがどこだかまるで分からないのが正直なところ。
「以前の場所にまだいるとも限らないし……レイヴモン、君も完全には内部を把握できていないのだろう?」
「え……そうなの?」
賢者の言葉にレイヴモンはこくりと頷く。
「某とミラージュガオガモンは元より組織には属さぬ身。アポカリプス・チャイルドの目を逃れるため、繋がりを悟られぬようゼブルナイツからは離れて動いておりました故」
つまりは、役割分担か。元魔王の部下として顔の売れているダークドラモンが矢面に立ち、兵力の増強と表立った戦いを仕掛け、その裏で顔の売れていない二人が諜報や潜入を行っていた、と。
「一部の幹部を除いては我々の存在すら伏せられております」
レイヴモンはそう続け、申し訳なさそうに首を振る。要するに、この中には味方になりうる者など一人もいない訳だ。
「なら……」
「手当たり次第に探すっきゃねえだろ」
「うん。そうなるね」
嗚呼、結局それか。先程空から見た限り相当の規模だ。それも中は敵だらけで、外は戦いの真っ最中。こんな状況で敵から身を隠しつつ当てどなく探し回れと?
「……悪夢ね」
「ははは。今更言ってもしょうがねえよ」
なんて笑うインプモンに思わず拳を握る。ちょうど、そんな時だった。私を呼ぶその声が、虚空にか細く響いたのは。