□第九夜 銀幕のファンファーレ
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9-1 聖戦の真実(2/4)

 
「それが意図したことか、はたまた偶然だったかは分からない。何せ本人に幾ら問うたところで、はぐらかされるばかりでね」

 かつて側近としてルーチェモンに仕えた最上位天使。天より堕ちたる者。あるいは、天より降りたる者。
 賢者の言葉に、ふと“その顔”が過ぎる。それはインプモンも同じだったのだろう。私とインプモンが声を上げたのは、ほぼ同時。

「リリスモン……」

 と、呟くような声には、どこか確信にも似た響きが混じる。賢者は小さく頷いた。

「ルーチェモンとともに解き放たれ、ルーチェモンより切り離された“闇”は、六つの器へと分けられた」
「その器とやらが俺たち、ってわけか」

 インプモンは自嘲めいた笑みを浮かべる。気付いているのかいないのか、そんなインプモンにも構わず賢者は、けれどと言葉を続ける。

「仮にリリスモンの行動がルーチェモンへの忠誠心故とするなら、それ自体は誤算以外の何物でもなかったろうがね」
「誤算?」
「ルーチェモンの身を案じるが故、強大過ぎる闇がルーチェモンの光すら飲み込むことを危惧したか、あるいは万が一のバックアップか」

 ぴくりとインプモンの眉根が揺れる。確かに何やら軽く流せる言葉には思えなかったが、しかし賢者はなおも語る。

「どちらにせよ、いずれルーチェモンの敵となるであろう魔王の存在は想定外だったはずだ。リリスモンがルーチェモンの忠臣だと仮定した場合、だがね」

 それだけ言うと賢者は大きく息を吐く。なるほどね、とは到底いくわけもない内容だったが、いや、あるいは端からこちらの反応を待っているのか。ならばと問うてみる。

「敵、って?」

 愉快な七人の仲間たち、などとは微塵も思っていなかったけれど、それでも同じ魔王ではないのか。そう問えば賢者は私を指差して、

「そう、正にそれが答えだ。かつてのルーチェモンを知る者ならば誰もがそう考えるだろう」

 ゆっくりと、賢者のその指先がインプモンを指す。

「同じ時代に在らば間違いなく君たち魔王の敵となった。何故ならルーチェモンは……」

 賢者はそっと瞳を閉じる。一拍を置いて語るその言葉に、私とインプモンは思わず目を丸くする。

「誰よりもこの世界を愛し、その行く末を憂い、確かな正義を以って平和を為そうとしたのだから。でなければ、天を二分するほどの大戦など起こるはずもなかったろうからね」
 
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